転職希望者との面談を行っていると、大きな「転機」を迎えていらっしゃるなあと感じることが少なくありません。転職=転機なので当たり前ではあるのですが、「転機」には色々な種類がありますし、受け止め方も様々です。

転職を考え始めるきっかけ、転機となりやすいのは、結婚や出産、親の病気など。
最近では、コロナ禍による会社の先行きへの不安もきっかけの1つでしょうし、リモートワークが増えたことにより、改めて通勤時間の無駄に気づいてしまったということもそうかもしれません。実際、職住近接の環境を求める相談も増えてきていますね。

と、転機にもいろいろとあるわけですが、キャリアカウンセリングの授業で学んだジェロスバーグの理論では、次の3つの要因から転機の影響度合いを考えることが大事だと言っています。

1.転機そのもの
2.転機を体験する本人
3.支援システム

1つ目の要因の「転機そのもの」というのは、要はどのような転機かということです。
転機の起こり方には次のようなケースがあります。
・予期していなかった転機
・自分自身が決断して生じさせた転機
・正常な発達過程の通過点として生じる転機

結婚や出産は基本的には自分自身の決断によって生じる転機ですが、コロナ禍による失業などは予想外の転機です。また、子供の独立や親の病気などは本来誰にでも起こる通過点なわけですね。

もちろん、転機の影響度は人それぞれで、その人にしかわからないわけですが、転機を捉える上で重要な視点は
1.転機の深刻さ 2.転機のタイミング 3.転機に対するコントロール 4.転機の持続性
の4つだそうです。中でもコントロールが効くものであるかどうか、どれくらい持続するものであるかによって転機の深刻さは大きく変わりますよね。

また、2番目の要因の「転機を体験する本人」というのは、本人の意識やスキルがどういった状態なのかということです。
例えば、
転機を肯定的に捉えているのか?
ストレス解消のスキルを持っているのか?
過去に転機を乗り越えた経験を持っているのか?
といったことです。

そして、3番目の要因である「支援システム」とは転機を支えるサポートのことです。
例えば、
心理的な支えとなる家族や友人がいるのか?
転機を乗り越えるための十分なお金や資源があるのか?
といったことになります。

ジェロスバーグによると、これらの3つの要因から転機の影響度をしっかり分析し、対策を立てることが重要というわけですが、私が最近の転職相談の面談で感じるのは、特に「個人が転機を乗り切るスキルを磨くこと」がとても大事なのではないかということです。

今は答えのない時代とも言えます。目指すべきロールモデルは崩れ、こうすれば正解という成功の方程式もありません。なので、自分の知識や情報ルートを駆使して、自分自身で考えて行動することがとても重要です。
転機で失敗しがちなシチュエーションとして多いのは、転職を肯定的に捉えられない時ストレスに負けている時です。そんな時は良い判断ができないですからね。

そうならないためには、この先どんな転機があるのか想像しておくことが大事ですし、ストレスに負けないためのストレス耐性を高めておくことが大事です。そんなスキルアップの第一歩を踏み出すためには、私は、ベタですが、継続的な読書によって知識量を増やすことをお勧めします。
howto本を読んだだけでスキルが上がるわけではありませんが、人間の心理的なメカニズムやあるあるな失敗事例を知っておくことは転機を乗り切るための大きなサポートとなるでしょう。

「転職」においても多くの失敗事例があるわけですが、同じようなメカニズムに基づいていることがよくあります。
例えば、ハロー効果選択のパラドックスといった先入観のワナが判断を鈍らせるパターンはあるあるです。でも、そんな先入観のワナに陥りがちな心理的メカニズムを知らないと、ついつい突っ走って短絡的な判断を起こしてしまうということになりかねませんし、失敗から学ぶこともできません。
また、想定していなかった形で転職を余儀なくされるようなケースもあります。そんな強いストレスを抱える中でも、高いストレス耐性があれば、転職を肯定的に捉えることは可能です。転職に限ったことではないかもしれませんが、ストレスを軽減する方法、ストレスを抱えた中でも冷静になる手法など、いくつも持っておいた方が強いですね。
ということで最後に、最近読んで参考になった本をご紹介したいと思います。

Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法

精神科医が教える ストレスフリー超大全――人生のあらゆる「悩み・不安・疲れ」をなくすためのリスト

かる~く読み流しつつも、なるほどなあと多くの気づきを得られると思います。
メンタルが良好な状態、自分を客観的に俯瞰した状態で転機、転職を考えることが大事だなあと思いますので、少しでも参考になればうれしいですね。