
採用ターゲットを見直す5つの視点
採用活動が激化する中、これまでと同じやり方では、思うような成果が出せなくなっています。 その中で、何とかして人材を確保するためには、さまざまな工夫が求められます。
その工夫の1つが、「採用ターゲットの見直し」です。
「採用ターゲットなんて今さら変えられない」と思っていませんか?
しかし、多くの企業が気づかないうちに、「この仕事にはこの属性の人が向いている」といった無意識のバイアスを持っています。
それが採用の選択肢を狭め、結果として人材不足を引き起こしている可能性があるのです。
もちろん、「どうしても外せない条件」があるのは当然ですが、ほんの少し視点を変えるだけで、新たな人材の可能性が広がることもあります。
この記事では、採用ターゲットを見直すための5つの視点を解説します。
性別を見直す
「この仕事は男性向き」「この仕事は女性向き」…そんな思い込みはありませんか?
採用において性別を指定することはできませんが、無意識のうちに「この仕事は男性向き」「この仕事は女性向き」と決めつけてしまっていることはないでしょうか?
例えば、「力仕事だから男性向き」「細やかな気配りが必要だから女性向き」といった固定観念が採用の幅を狭めている可能性があります。
実際には、トラックドライバーや建設業でも女性が活躍するケースが増えており、逆に管理部門や接客業で男性が成果を上げている例も少なくありません。
性別にこだわるのではなく、求めるスキルや適性を基準にすることで、採用の選択肢が広がります。
【事例】
印西市にある創業50年の鉄骨工場で初めて女性社員を製造職として採用しました。
これまで女性採用など考えたこともないとのことでしたが、求人サイトを通じて応募があり、 「ダメ元で」面接したところ、重機工場での事務職経験があり、現場にも抵抗がなかったことから採用してみることを決断。
彼女の入社後、周りのスタッフが変わりました。彼女を手助けしようと、力仕事をサポートしたり、工夫してわかりやすいように教えたり…
「女性だから無理」という思い込みを捨てたことで、未経験者採用にも活かせる学びが得られたと社長は話していました。
ちなみに、チームに女性がいることで、生産性や問題解決力、イノベーション創出率が上がるという様々なデータがあります。製造や建設などの現場でも、同じような効果があると一石二鳥ですね。
年齢を見直す
「マネージャーより年下のほうがやりやすい」「40代を超えるとフットワークが鈍る」…そんな理由で候補者を絞っていませんか?
求人の募集要項とは別に、「◯歳くらいまでが理想」と、無意識のうちに年齢でフィルターをかけてしまっているケースは少なくありません。
しかし、年齢が高い求職者の中には、豊富な経験を活かし、即戦力として活躍できる人が多くいます。
最近では転職市場における30代後半から50代の割合が増えており、企業にとってミドル層の活用がますます重要になっています。
年齢を制限するのではなく、経験やスキル、価値観のマッチングを重視することで、採用成功の確率を高めることができます。
受け入れる側や指導する側も、年齢の逆転にとらわれない柔軟なコミュニケーション力が求められるかもしれません。
【参考】
エン・ジャパン株式会社が運営する『ミドルの転職』上で、サイトを利用している人材紹介サービスの転職コンサルタントにおこなった「2025年ミドルの求人動向」調査では、72%のコンサルタントが、ミドル人材対象の求人が「増加していると感じる」と回答しています。
すでに年齢要件を見直している会社も増えてきているので、ミドル人材の採用検討もスピード感を持って取り組む必要がありますね。
出典:「2025年ミドルの求人動向」調査(エン・ジャパン)
働き方を見直す
「フルタイム勤務の正社員でなければ責任のある仕事を任せられない」と思っていませんか?
確かに、フルタイム勤務の正社員の方が会社の価値観を共有しやすく、長期的な戦力として育てやすい面はあります。
しかし、近年は 副業人材、派遣社員、契約社員など、多様な働き方を選ぶ人が増えているのが実情です。
なぜ、今「働き方の見直し」が重要なのでしょうか?
一つの理由は、「フルタイム勤務の正社員にこだわることで、採用の選択肢が狭くなっている」からです。
例えば、「経験はあるが、家庭の事情でフルタイムは難しい」人材や、「副業として専門スキルを活かしたい」と考えている人材を活用できれば、採用の幅が広がります。
「週3日勤務の専門職」、「時短勤務の正社員」、「プロジェクト単位で関わる副業人材」 など、従来のフルタイム勤務にとらわれない選択肢を用意することで、より多くの優秀な人材を確保できる可能性があります。
ただし、柔軟な働き方を取り入れるには、業務の整理が必要です。
たとえば、派遣社員や副業人材を活用するためには、「どの業務をどう切り分けたら任せられるか?」を明確にすることが大切です。
その結果、業務フローの見直しが進み、組織の生産性向上にもつながるというメリットがあります。
【事例】
弊社では、ここ数年、正社員以外の採用手段、人材活用手段が増えています。元社員に業務委託で働いてもらったり、営業事務を派遣で採用したり。インサイドセールスに当たっては、一部、アウトソース人材を活用しています。
新しいチャレンジをする度に、業務フローの見直しや業務の効率化、指導法の改善などの必要性に迫られます。結果、これ以上は無理だろうと思っていた生産性の向上がさらに進むという小さなイノベーションが生じています。
ライフステージを見直す
「子育て中だから当社の業務は難しい」「60歳を超えると働く意欲が低い」…そんな先入観はありませんか?
求職者のライフステージに目を向けることで、これまで取りこぼしていた人材を採用できる可能性があります。
なぜなら、ライフステージに応じて、能力や意欲を十分に発揮できていない人が多いからです。
例えば、
- 子育て中の人材: 限られた時間の中で効率的に働くスキル を持っている
- 子育てを終えた人材: 安定した環境で専門知識や経験を活かしたいと考えている
- 60代以上の人材: 若手をサポートする指導役や顧客対応のスペシャリストとして活躍できる
自社の環境や考え方を変え、働く側のライフステージに合わせた環境整備をすることで、これまで活用できなかった人材を採用できるチャンスが生まれます。
【事例】
山武市にある酒造メーカーでは、子育て中のパートの女性が出荷部門、製造部門の強力な戦力となっていました。
そこで、子育て世代がより働きやすくなるように会社の勤務時間を9時~15時に変更しました。勤務時間を変えたことで、スタッフたちは気兼ねなく、子供を幼稚園・保育園・小学校に迎えに行くことができます。
子育て中の女性の応募が増えただけでなく、スタッフ全体のモチベーションが上がり、仕事に対する取り組み方も前向きに変化したと社長は喜んでいます。
居住エリアを見直す
「できるだけ近くに住んでいる人を採用したい」…そんな考えに縛られていませんか?
地元の人材を採用したいというのは当然の考えですが、それにこだわりすぎると、優秀な人材を見落としてしまう可能性があります。
特に千葉県は、首都圏からのアクセスが良く、地方からの移住希望者にとっても魅力的なエリアです。近隣地域だけでなく、Uターン・Iターン希望者もターゲットに含めることで、採用の可能性を大きく広げられます。
引越し手当や住宅手当、借り上げ社宅の用意など、Uターン・Iターンを意識した制度を備えることも重要ですね。
また、ダイレクトリクルーティングを活用し、関東への転居を検討している求職者へアプローチするのも一つの手です。現在、千葉に居住していることが必要なのか?を見直すことも必要です。
【補足】
居住エリアの違う人材にアプローチするのは有効だという仮説は、大学新卒の採用にも当てはまります。
リクルートキャリア就職みらい研究所の「大学生の地域間移動に関するレポート2024」のデータが面白く、東北や京阪神の大学に進学している学生の20%以上が首都圏で就職しています。
首都圏の大学生を取り合うよりも、別のエリアの大学に通っている学生を狙うというのもターゲットをずらすという点で効果があります。
出典:「大学生の地域間移動に関するレポート2024」(リクルートキャリア就職みらい研究所)
まとめ
「採用ターゲットの見直し」の視点として5つご紹介しました。
1.性別を見直す
2.年齢を見直す
3.働き方を見直す
4.ライフステージを見直す
5.居住エリアを見直す
いかがでしょうか?
いまさらという点もあったと思いますが、意外な盲点もあったかもしれません。
採用ターゲットに関して、これまでの常識を疑うことで、少しでもターゲットをずらしたり、広げたりすることができれば、採用活動の改善につながります。
ぜひご検討ください。