千葉市教育委員会
家族も、生徒も、自分も。みんな大切。

家族も、生徒も、自分も。みんな大切。

教員に再挑戦した先生(40代)
2025年入社
前職:在家庭
現職:特別支援学級(中学校)の常勤講師

私が何よりも大事にしたいと思っていたのは、家族でした。

ー先生になる前は、どんなお仕事をされてきたのですか?

初めは銀行です。窓口ではなく、後方事務で通帳を作ったりデータ入力をしたり、いわゆる「裏方」の仕事をしていました。

ただ、その頃に仕事とは関係なく体調を崩してしまって。結婚を考えていた時期でもあったので、無理のない働き方をしようと転職をして、結婚して、パート勤務に切り替えて、家庭をつくっていくことに専念しようとしていたのですが、そのタイミングで学生時代の先生から電話がかかってきたんです。

ーどんな電話が?

「学校で、家庭科の先生をやってみないか」というお誘いでした。私、中学校の家庭科の教員免許を持っていたんです。それで、急に空きが出てしまったところに臨時で入ってほしいというお話でした。新しい生活に向けて引越しを決めたところで、明日にはもう電話番号が変わるというタイミングで…。いま思うと、運命のようなものを感じます。

東京都の中学校だったのですが、私は「やる」と決めて千葉の自宅から通いました。初めは通常学級の家庭科の授業を担当し、2年目からは特別支援学級も担当しました。通常学級を見ながら特別支援学級にも関わる形で、サポートの先生にも入っていただきながら、少しでもお役に立とうとがんばりました。長い通勤も、何とか乗り切りました。その後、出産を前に退職して、私にとって「1度目」の先生の仕事は、ここで一区切りとなります。

ーその後は、どうされていたのですか。

子育てを楽しんでいました。私は基本的に、家庭を大事にできるようにということを第一に考えて行動してきたと思います。その願いが叶った日々でした。息子が幼稚園に入って少し手が離れたタイミングで、無理のない範囲で、近所のテニススクールでフロント業務のパートの仕事も始めて、毎日を楽しんでいました。

ーテニスが得意なのですか?

いえ…全然。運動神経ゼロなんですけど、自宅から近かったんです(笑)

ーそうなんですね(笑) そこから、どんな経緯で先生の仕事に戻ってこられたのでしょうか。

息子が小学校に上がってしばらく経った頃、息子が通う学校からのお便りの中に、「会計年度職員(非常勤)として教員の仕事をしてみませんか」という募集があったんです。

特別支援学級で生徒の学習をサポートしたり、通常学級との交流学級(通常学級の生徒と一緒に授業を受けること)に付き添ったりする仕事でした。

ーその仕事に応募されたということなんですね。

はい。

ーどんなきっかけがあったのでしょうか。

息子の一言が、きっかけになりました。

「お母さんの夢は?」という息子の一言で、自分がやり残してきたことを思い出した。

ー息子さんと、どんな話をされたのですか?

息子が小学校3年生のときだったのですが、当時から息子はスポーツをがんばっていて、そのスポーツの選手になるのが夢なんです。その日も何気なくその話をしていたのですが、その時に、ふと息子が言ったんです。「お母さんの夢は、何?」って。「僕にはやりたいことがあるけど、お母さんにはないの?」って。

息子を支えること、家族を大事にすることが自分の仕事だって。私はそう思っていたんですけど、息子のその一言で考えてしまったんです。

ーはい。

私は、教員をしていたときのことを思い出しました。あの頃はまだ20代で、できないことがたくさんありました。出産して、子育てをして、たくさんの大変なことや嬉しいことを経験して、子どものいろんな変化も見てきた今なら、きっと、もっとできることがあるのにって、思いました。当時は臨時で入った教員の仕事でしたし、家庭の事情もありました。経験も浅かったですし、言い訳になってしまうかもしれませんが、どこかで、やりきれなかったという思いが残っていたのだと思います。

募集のあった特別支援学級で仕事をしたいと思いました。でも、私は家族が大事です。

私が教員の仕事に復帰することを、まだ小学生の息子はどう感じるだろうと考えました。教員になれば、息子以外のたくさんの子どもたちのことを考えることになります。場合によっては、私が仕事に復帰することを嫌だと感じることだってあり得るのではないかと考えました。

ーはい。

私は、自分の思いを息子にそのまま話してみました。この仕事をやりたいと思っていること。やり残してきたことがあるような気がしていること。だからこそ、もう一度やりたいと思っていること。そしたら、「やればいいじゃん。やれるよ」って。息子は元気に、能天気に(笑)言ってくれました。

ーはい…!

私は特別支援学級講師の仕事に応募して採用され、2年間、非常勤講師としてお世話になりました。そして今年度(取材当時2025年度)から、特別支援学級の常勤講師として現在の学校に赴任してきました。「国語」「家庭科」「道徳」など、聞きなじみのある教科の授業だけでなく、「自立」「作業」といった特別支援学級ならではの授業も自分が主体となって行いながら、特別支援学級1年生の担任もさせてもらっています。

毎日笑顔がたくさんあって、明るくて。とにかく楽しい。

ー今のお仕事を、どう感じていますか?

楽しいです。とにかく子どもたちが明るくて、一緒に過ごしていると、こっちまで気持ちが明るくなるんです。

朝、登校してきた子が「昨日ね、こんなことがあってね」って話しかけてくれるところから1日が始まって、授業が終わると「今日の授業すごい楽しかった!」「またやりたい!」ってみんなが言ってくれて、一緒にはしゃいで、生徒たちを見送って。さあ、明日はどんな授業を創ろうって、楽しみで仕方ないんです。

ー授業は、ご自身で工夫される部分も多いのですか?

ベースはありますが、その上で、自分で工夫している部分もあります。やっぱり、ただ教えるだけでは飽きちゃう生徒もいるので、授業の流れの中に、ちょっとした「ご褒美」を入れたりします。例えば国語の授業の合間に、カタカナ語をカタカナなしで説明するゲームや、「はあ」という言葉を色んなイントネーションで言ってみるゲームを入れてみたり。

ー面白そうですね。

面白いですよ。同じ「はあ」なのに、どう発音するかによって違ったニュアンスになったり、生徒たちの表現によって「なるほど!」と思える新しい発見が生まれたり。

特別支援学級に限ったことではないですが、やっぱりクラスの中にはコミュニケーションが不得意な生徒もいて、うまく気持ちを言葉で伝えられなかったりするのですが、そういう子も、このゲームなら音で気持ちを伝えられます。それに、ゲームだと「答えよう」「伝えよう」というスイッチが入るので、文章を読む、書くというような難しいことをがんばった後でも、自然と楽しみながらできますし、それが「続けていく力」にも繋がると思っています。

ゲームは元々、息子がやっていたのを「それ、いいね」って言って拝借してきたものなんですけどね。こんなところでも子育ての経験が生きています(笑)

ー授業で、どんなことを目指しているのでしょうか。

私が担当している特別支援学級では特に、自立して生きていく力を身につけられるようにするということを大切に考えています。「作業」の授業を通じて自分の手でものを作ることができるようにすることもそうですし、ゲームを通じてコミュニケーション力を身につけていくこともそうですし、自分でできるようにって、考えています。

ーどんなときに嬉しいですか?

一人一人に向き合って、考えたり、工夫したりする中で、「これが苦手!」「できない!」と言っていた生徒が、「できた!」「これ好き!」と変化していったり、成長していくのが見えたりすると…すごく嬉しいです。子育てと一緒ですね。

例えば、ミシン。機械の操作を覚えるのも難しいことですが、そもそもミシンには針がついていますよね。それで「ミシンが苦手」「怖い」という生徒がいました。そこで思いついたのが、テレビゲームです。生徒に、車を運転するゲームを想像させました。「手はハンドルだよ。足はアクセル。思いっきり踏んだらすごいスピードになってしまうから、安全運転で、まっすぐ進んでください」って。すると、その生徒はうまく要領をつかんで、楽しそうにミシンと向き合えるようになれたんです。嬉しかったです。

今年から担任を持つようになって、これまで以上に生徒と向き合えるようになって、以前は「もう一歩踏み込んで言ってあげたいけど、言っていいのだろうか」と遠慮していたようなことも、言えるようになって。いまの私にとって、生徒たちは自分の子どものような存在なんです。

ー今後、どんなふうに働いていきたいですか?

現状維持、です。いまが必死というか、全力なので、このまま全力でいたいです。適当になりたくないんです。いま40代の半ばですが、50歳になっても60歳になっても、こういうふうに働いていたいなって思います。

ー年齢や経験を気にして、先生になりたいという想いをおさえている方もいるかもしれません。そういう方に、伝えたいことはあるでしょうか。

不安な気持ちはわかります。でも、実際に学校で働いてみるとわかるんですけど、教員の仕事って、年齢も性別も経験も、本当に関係ない職場なんです。どんな人でも、それぞれの個性を活かして活躍できる仕事というか。苦手なことは、先生同士みんなでカバーし合いながら進められますし。私もパソコンがからきしダメで、本当に使えないんですけど、大丈夫なんです。先生の中に必ず得意な人がいますし、何しろ先生なので、教えるのがすごく上手。何も困ることはないです。

子育てしながら全力で、楽しく仕事できますし、むしろ子育ての経験があるからこそできることもたくさんあります。先生の仕事は「大変そう」って思う方もいるかもしれないですけど、休日の取り方や勤務時間なども含めて、実はすごく働きやすい環境です。私は、この仕事だからこそ、家族も、自分も、大切にできていると感じています。

それに…生徒たちと一緒に過ごして、毎日ちょっとずつ前に進んでいく姿や、それが積み重なっていつの間にかすごく成長している姿を見ることができる喜びは、やっぱり何ものにも代えられません。

ーこの仕事に戻ってこられて…よかったですね。

はい!

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