千葉市教育委員会
大切なものを、ちゃんと大切にできる。

大切なものを、ちゃんと大切にできる。

企業から転職してきた先生(50代)
2025年入社
前職:メーカーの営業
現職:小学校の非常勤講師

人手不足で「先生を探している」という事実を知って、私にできることはないだろうかって思った。

ー前職ではどんなことをされていたのですか?

飲料メーカーにいました。入社は30年前です。

ー職種は?

新卒で入ったときは、人事部門に配属されました。その後、営業をやって、営業企画をして、本社の営業部で全国の拠点の支援もして。通常は、営業畑とかバックオフィスとか、一つの軸を持ってキャリアを積むことが多いのですが、私はほとんど全てをやらせてもらえました。いろんな経験を積ませて、成長させたいと考えてもらっていたのだと思いますし、ありがたいことでした。最終的には管理職として、他の事業会社との協業を進めるなど、本当に様々な経験をさせてもらいました。

ーすごい…キャリアですね。元々キャリアパスのイメージを持っていらしたのですか?

いえ。正直、20歳そこそこで入社した当初は、自分が社会に出て何ができるかなんてわからないと思っていました。だから、会社をよく知っている先輩方が「これが合ってると思うから、やってみなよ」と振ってくれる仕事を、どんどん積み重ねていきました。

自分で「これしかできません」と可能性を閉ざすのではなく、若いうちは何かに絞らず、自分ができることを会社の中でどんどん試していこうって。そうしているうちに、自分がどうなるかは分からないからこそ面白いと思うようにもなって。何かをやるたびに、その次の可能性が見えてくる。そんな感じで30年歩んできたような気がします。

ー充実したキャリアを歩んでこられたのですね。管理職にまでなられて、これからさらに深く事業にコミットしていくというタイミングで、教職という全く別の道を選ばれた。そのきっかけは何だったのでしょうか。

いくつかのことが重なりました。一つは、一昨年に父が入院したことです。10年前に他界した母が、生前にずっと父のことを気にかけていたのですが、母がいない今、娘である私が父の近くにいなきゃと思いました。それに、会社で次のステップに進むとなると、今以上に仕事で各地に行く必要が出てくるし、会食なども多いです。父のことだけでなく、自分のこれからの生活を考えたときに、このままでいいのだろうかと思いました。

そんな時に、地元である千葉で、教員不足で「先生」を探しているという事実を知ったんです。先生がいないってどういうこと?って友人と話して、衝撃を受けました。少しでも、何か私にできることはないだろうかと思いました。それで、通信教育で小学校の教員の資格を取りました。

ー教員の免許を新たに取られたのですか?

はい、取りました。

ーすごい…。そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。

教育現場がここまで大変な状況だということを民間企業にいる方はあまり知らないと思います。私もそうでした。だからこそ、未来を担う子どもたちが困っている現状をどう伝えていくかが大事だと思いますし、その前に、まずは私自身が少しでも役に立ちたいと思いました。

千葉生まれ千葉育ちの私は、ずっと「最終的には千葉に貢献することをしたい」と思っていました。

私の名前には「千」という字が入っていて、「千葉を助ける子」という意味が込められているんです。私が生まれる前に亡くなった祖父がつけてくれた名前なのですが、私は、この名前に込められた思いに応えたいなと思っています。大好きな地元、千葉のために何かしたいんです。私は、「何が今の千葉の課題か」というところから入って、教職に関心を持ちました。同じ時期に父の入院があり、「今だ」って思ったんです。もちろん30年続けてきた仕事も大切に思っていますが、後悔はありません。私は、ずっとやりたいと思ってきたことに向けて、動き出すことができました。

ここは「人を疑わなくていい」世界。

ー先生のお仕事は、どんな形でスタートしたのですか?

初めは、妊娠中の先生のサポートをすることからスタートしました。私が授業を直接受け持つわけではなくても、授業の準備やテストの採点など、できることはたくさんありますし、「妊娠中の先生を通勤ラッシュの電車に乗せるわけにはいかない」と思って、プリントの準備など私にできることはどんどん任せてくださいと言って、できる限り早く帰ってもらえるようにしていました。

ーそれは、すごく助かるのではないでしょうか。

ありがたいことに、担当の先生はもちろん、他の先生方にも「本当に助かります」「ありがとう」って言ってもらえました。ここには、一人の先生の業務負荷を軽減するという明確な役割があって、自分ががんばれば、その先生は必ず「ありがたい」って思ってくれる。嬉しかったです。

私は、教員の仕事を始めて、児童の役に立つことよりも、まず、先生の役に立てる喜びを知りました。そして、これは私が「やりたい」と思ったこと、教育現場の大変さを少しでも減らしていきたいということ、そのものだと思いました。

その上で、児童の役に立てることがあると、それはやっぱり、すごく嬉しいことですけど。

ーどんなときに嬉しいですか?

子どもたちって、いろんなことを考えていると感じるんです。困っていることや思いを私に相談してくれるときがあって。そういうときは、やっぱり嬉しいです。担任の先生は、優しいばかりではだめで、厳しくしなきゃいけないときもあります。だからこそ、私はフォロー役として、「こうやって先生に伝えてみたら?」って、児童が一歩踏み出せるように背中を押してあげられたらいいなと思っています。

ー素敵ですね。今はどんな仕事をされているのですか?

サポートしてきた先生がいよいよ産休に入られたので、今年度からその後を継いで、そのクラスの授業を行なっています。4年生です。

ーすごい!

ただ、私はフルタイムの勤務ではなく、1日5時間、週に4日間の勤務なので、教務主任の先生と分担して授業を受け持っています。

ープライベートと両立できる、いい働き方ですね。

それは、本当にそう思います。プライベートを一切犠牲にせず、健康的に働けています。

ー教える教科は?

国語、算数、書写、図工などを私が教えています。

ーそんなにたくさんの教科を教えるのは大変ではないのですか?

それ、よく聞かれるんですけど、実は、そんなに大変じゃないんです。周りの先生方もいろいろ教えてくれますし、指導書というものもあります。不安だったら、まずはその指導書の通りにやれば授業は成立します。その安心感があるからこそ、慣れたら自分なりに工夫をしていこうという気持ちに、無理なくなれますし。多くの人が「これならできる」って、きっと思いますよ。私がいま算数で教えているのは分数の計算ですが、分母の揃った計算です。教え方さえわかれば決して難しい計算ではないですし、大丈夫なんです。

ーそう言われると、分母の揃った分数の計算なら教えられるかもって思えてきますね。

でしょう?(笑)

小学校では、体育・音楽・英語・理科・図工・家庭科など、「専科」で1教科だけを教えている先生もいますし、教えるハードルは実はそんなに高くないんです。

ー実際に教育現場に入ってみて、驚いたことはありますか?

一緒に働く先生たちはみんな「児童の成長のために」という共通の目的を持っています。私が長くいた企業の世界では、それぞれの立場で目的があって、必ずしも同じ目的で動いているわけではなかったと感じていますし、そういう中で、どうしても「この人は何を考えているのだろう」とか、疑心暗鬼になってしまうこともあったと思うんです。それが、ここにはありません。

大人は、みんなが児童のために一生懸命がんばっています。それがわかるから、ここでは、人を疑うということがないんです。みんなが助け合う空気が素敵だと思いました。

児童とのコミュニケーションも心地いいです。私が受け持つクラスの児童はまだ4年生なので、騒いでしまったりすることもありますが、「素敵な5年生、6年生になってほしいなあ」って伝えると、急に自覚をもって廊下の右側を静かに歩くようになったりして。「すごい。できるじゃん!」って褒めると、ニヤッと笑って。そのうちに、自分たちで「静かにしようよ」って言うようになったり、主体性が生まれてきて。そうやって毎日成長していく児童たちを見るのが本当に楽しいです。

それに、大人と違ってびっくりするぐらい後を引かないところがあって。注意したり、指導したりした後でも、しばらくするとケロッとして、「ねえ、先生!」って声をかけてくれます。こういうところも心地いいんです。

ここは、人を疑わなくていい世界なんです。

「無理のない働き方」が、ちゃんとできる。それでいて、やりがいは果てしなく大きい。

ー教員の仕事を始めてみて、生活は変わりましたか?

劇的に変わりました。ずっと同じ企業で同じ業界の人と過ごしてきたので、違う世界も見てみたいという気持ちはそもそもあったのですが、実際にきてみると、本当に別世界でした。

まず、健康的な生活になりました。前職では会食も多くて、平日はほぼ外食でしたが、今は自炊をして、美味しいものを食べて。ストレッチや筋トレも毎日できるようになって、ものすごく健康になりました。

あと、地元の友人に会って、みんなで笑って過ごせる時間も増えました。もちろん、父の近くにいることもできています。自分にとって大切なものを、ちゃんと大切にできるようになりました。

ー30年いた会社を退職して新しい道を選ぶというのは、やはり大きな決断だと思うんです。そういう観点で、教員に関心がある方に伝えられることなどはあるでしょうか。

企業には、様々な人がいます。いました。人が良すぎて営業成績が中々上がらないというような方を見たりもしてきました。そういう方、少なからずいると思うんです。

そういう方は教えるのがすごく上手だったりします。それに、優しいから子どもたちのことをきっと真剣に考えられる。先生になったらいいんじゃないかなって思ってしまいますね。企業では、時にうまくいかない要因になることも、ここでは強みに変わる。実際に教育現場に立ってみて、そういうことを強く感じています。

学校の先生というと「大変」という印象を持つ方もいると思いますが、私自身がそうであるように、講師はフルタイムでなくても働けるし、「無理のない働き方」がちゃんとできます。みんなが助けてくれますし。それでいて、人の役に立てる実感はものすごくあります。やりがいは果てしなく大きいです。

優しい方、後輩の育て方が上手な方を、私は企業でたくさん見てきました。そういう方のセカンドキャリアとして、教員の仕事はものすごく魅力的なものなんじゃないかと思います。

ーこの仕事に出会えて、よかったですか?

はい。ようやく千葉で働けるようになったことも、こんなにも健康に心地よく仕事ができていることも、大事な仲間との時間をちゃんと持てるようになったことも、家族を大切にできるようになったことも。よかったなあって思います。何より、先生たちの役に立てて、少しずつ児童の役に立てる実感も出てきて、今、私は幸せです。

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