手に職がほしくて、この仕事を選んだ。
でも、9年続けている理由は、別のところにあった。
2018年入社・現在9年目。施工スタッフ3年を経て、施工管理へ。
「工具を使う仕事がしたい」から動いた
高校は、自動車整備の課程。整備士を目指していたIさんだが、在学中に「車の整備は、趣味程度にできればいい」と思うようになった。とくにやりたいことが決まっていたわけではない。卒業のとき、地元の知り合いの社長から誘われ、仲のよい同級生と一緒に造園会社へ入った。
道路脇の植栽の剪定や公園の管理といった公共工事を中心に、個人宅の庭づくりも手がけた。ここで4年を過ごした。
やがて、「工具を使う仕事がしてみたい」という思いが芽生える。造園も立派な「手に職」の仕事だが、自動車整備を学び、工具で何かをつくることが好きだった自分には、別の手ざわりがほしかった。「手に職」「工具を使う」----その二つで考えたとき、頭に浮かんだのが設備の仕事だった。
「空調」を選んだわけではなかった
正直に言えば、空調にこだわりがあったわけではない。設備には電気・空調・給排水などいくつかの分野があるが、当時はその違いすら意識していなかった。「どれでもよかった」というのが本当のところだ。
ネオテックを知ったのは、新聞に入っていた一枚のチラシ。本当にたまたまだった。未経験を歓迎していて、内定をもらえた。「ここでお世話になろう」。決め手は、大きな志望動機というより、迎え入れてくれたという事実のほうだったのかもしれない。
屋外から、屋内へ。最初は「苦労話ばかり」
最初の3年は施工スタッフ。個人宅のエアコン取り付けから、先輩に教わりながら現場を覚えた。造園との一番の違いは、屋外か屋内か、だった。お客様の建物に上がって作業するから、服装も、身だしなみも、匂いにも気を配る。汚れて当たり前の屋外に慣れた身には、お客様と同じ空間で緊張感のある屋内作業は、正直こたえた。
精度も違った。前職の造園では、葉が1cmずれてもさほど気にならなかったが、エアコンは少しの傾きも一目瞭然。お客様の製品を傷つけない気づかいもいる。「繊細な仕事だと思いました。......って、さっきから自分は苦労話ばかりしていますね?」と、Iさんは笑う。
それでも続いたのは、「ありがとう」を肌で受け取れるから
では、なぜ続いたのか。この仕事は、工事が無事に終わると、必ずと言っていいほどお客様に感謝される。ネオテックは設計・管理・施工まで自社で一貫し、個人でも法人でも元請け。しかも、すでに使われている建物の空調設備の入れ替えやメンテナンスが多い。だから、その場で設備が動くところまで、自身の目で確かめられる。「涼しくなった」「よかった」というお客様の顔を、その場で直接見られる。それが、大変さを上回った。
やがて施工管理へ。きっかけは単純で、現場をまとめる先輩の姿が「カッコいい」と思ったから。当初は自信がなかったものの「やってみたい」という気持ちが芽生えた。施工で現場を知っていきながら、社長をはじめとする周囲の後押しもあり、少しずつ管理へ移っていった。管理者は、自分だけでなくみんなの声を聞き、すり合わせて一番いい工程をつくる。コミュニケーションがいっそう問われる。責任が増えるぶん、やりがいも、収入も大きくなった。
技術以外のところで、育ててもらった
感謝の長文メールをもらうことがある。「あなたに頼んでよかった」。Iさんは思う----わざわざそこまで伝えてくれるのは、仕上がりだけの話ではないのだ、と。言葉づかい、お宅で靴を揃えること。そういう部分ができていなかったら、「つけてくれてありがとう」で終わっていたかもしれない。
そのマナーは、社長が直々に、そして先輩の背中から学んだ。「自分の中の"当たり前"が、当たり前じゃないんだと気づかせてもらえる」。20代の頃は、本当の大人がどんなものか分かっていなかった。ルールや言葉づかいを覚えるうち、「自分も"いい大人"になってきているのかな」と思えるようになった。あるときお客様に「言葉づかいが綺麗ですね」と言われ、意識していなかっただけに、驚き、うれしかった。
いま任されている、一番大きな現場
9年目。これから始まるのは、公共施設のエアコン入れ替え工事で、金額にして約1億4,000万円。自分の中で一番大きく、会社が手がける工事としても大きいほうだ。「入社した頃は、こんな現場を任せてもらえるとは思っていなかった」。
目標は、資格。1級管工事施工管理技士を、いままさに勉強している。現場代理人として実務は1から10までやらせてもらっているが、資格がないと自分の名前が使えない。「せっかくやっているのに実績として残らないのは、もったいない」。自分の名前で現場を持てるようになるのが、当面の目標だ。プライベートでも、電気やエアコンのこと、見積もりの相談で友人に頼られることが増えたという。
「手に職」を入口に選んだ人が、9年続けた理由は、手に職そのものではなかった。
とくべつな「やりたいこと」から始まった転職ではない。それでも続いたのは、目の前の人に「ありがとう」と言ってもらえる手ざわりと、技術の外側まで育ててもらえたからだった。入口で思い描いたものと、続ける理由は、必ずしも同じではないらしい。
あなたが仕事を続けられるとしたら、その理由は「入口で思い描いていたもの」でしょうか。それとも、働くうちに見つかる「別のもの」でしょうか。
※「ちばで転職した、ひとのはなし」編集部セレクト。実名・会社名・写真は、企業・本人の許可が取れた範囲で掲載しています。