
法人営業にはどのようなスキルが必要なのだろう?と改めて考えることはありませんか。
初めて法人営業にチャレンジしたいという方は今後習得すべきスキルを知りたいと思うことがあるでしょうし、法人営業の経験を活かして転職したいという方は、改めて自分のスキルのレベルを確認したいと感じることもあるでしょう。
そこで、この記事では、法人営業に絶対必要だと筆者が考えるスキルについて解説します。解説にあたっては、法人営業における営業ステップと照らし合わせています。
なぜなら、それぞれのスキルが営業ステップのどの部分でどのように必要となるのかを理解することが大事だと考えるからです。
この記事を読んでいただければ、法人営業全体の流れとそれぞれのシーンで必要なスキルが明確になると思います。
1.法人営業に絶対必要な7つのスキル

①仮説立案力(限られた情報から仮説を想定する力)
法人営業の様々なシチュエーションにおいて、答えを導き出すために必要な情報がすべて整っているということはなかなかありません。今ある限られた情報をもとに、問題の本質や解決策をイメージし、現時点で最も妥当だと思える答えを引き出すことが求められます。
正解がわからない中で、どこに問題があるのか、どうしたらその問題が解決できるのかといった仮の答えを想定する力が仮説立案力です。仮説立案力の優れている人は、仮説を立てるスピードが速く、現実とのずれが少ない仮説を立てることが可能となります。
②ヒアリング力(お客様の抱えている問題の本質を引き出す力)
法人営業の役割はお客様の困っていることを解決することです。そのためには、現象としている生じている目の前の問題に対処するだけでは不十分なことが多くあります。問題の本質をつかみ、お客様にその本質を自覚してもらい、その本当の原因に向き合うことで初めて本当の問題解決につながるのです。
聴くことでお客様の抱えている問題の本質を引き出し、その解決の糸口を見つける力がヒアリング力です。ヒアリング力の優れている人は、お客様自身が気づいていない問題をあぶりだし、問題解決への意欲を高めることが可能となります。
③論理的思考力(物事を筋道立てて考える力)
法人営業において、お客様の問題の本質をつかんだ後に大事なのは、実際に問題解決の方法を考えることです。その際に、物事を筋道立てて考えられないと、複雑な因果関係を紐解いたり、必要な要素を漏れなく、ダブりなく考えることができませんし、お客様に納得のいく説明を行うことができません。
「なぜそうなったのか」という物事の原因を追究し、それをわかりやすく説明する力が論理的思考力です。論理的思考力の優れている人は、話をわかりやすく伝えたり、説得力のある話し方することが可能です。④コミュニケーション力(お互いの意思疎通をスムーズにする力)
法人営業においては、初対面で相手のバックグラウンドを知らないまま商談をすることも多く、短時間で信頼関係を構築することが求められます。会話のペースを合わせたり、相手の発言の意図をすぐにくみ取ったり、意思疎通のレベルを上げることがとても重要となります。
電話や面談において、意思疎通をスムーズにし、この人なら信用できるなと早い段階で信頼関係を構築するのがコミュニケーション力です。コミュニケーション力の優れている人は、お客様から頼られたり、担当者として指名されたりすることが可能です。
⑤プレゼンテーション力(相手に変化や行動を促す力)
法人営業では、商品やサービスの概要をわかりやすく伝えるだけでは不十分です。その場で決裁をしてもらったり、サービスの導入に向けてデモを行う、会議でのプレゼンの段取りをしてもらうなど、具体的に次のアクションを起こしてもらうことが大事です。
単に相手に物事を伝えるのではなく、行動や変化を促して次のアクションを引き出すのがプレゼンテーション力です。プレゼンテーション力の優れている人は、お客様との協働関係を築いたり、お客様に前例のない決断をしてもらったりすることが可能です。
⑥問題解決力(問題を解決する力)
法人営業においては、お客様の抱える問題そのものはもちろんのこと、その問題解決に至るまでのプロセスの中で、費用や納期、方法など、様々な別の問題とも向き合わなければなりません。それらを素早く解決していくことが重要となります。
問題の原因を1つずつつぶしていくことが問題解決力です。問題解決力の優れている人は、どんな問題が生じても動じず、解決までの糸口を見つけることが可能です。その結果、お客様や部下から高い信頼を得ることが可能となります。⑦目標達成力(目標を計画する力とやりきる力)
法人営業においては、部門においても個人においても、適切な目標を設定し、達成することが求められます。目標を追求することで、商品やサービスの質が高まったり、必要な利益を上げることができるからです。
適切な目標を設定することの意味を理解し、緻密な計画を立案し、完遂するのが目標達成力です。目標達成力の優れている人は、社内から高い信頼を得たり、早い段階でリーダーやマネジメント職に必要なスキルを習得することが可能です。
2.営業ステップごとのスキル活用シーン
この章では、営業ステップごとにどのスキルがどのように必要となるかについて解説します。
実際の事例を交えて解説しますので、具体的なイメージが湧くと思います。
まず、法人営業の営業ステップは大きく次の3つのプロセスに分かれます。ステップ①:目標達成のための営業施策の立案、ステップ②:営業施策の実行、ステップ③:施策の効果検証と改善です。
それぞれのプロセスにおいて特に重要となるスキルが異なりますので、それについて解説します。
・目標と予測のギャップの把握
・新たな施策による売上目標の設定
・営業施策の立案(アプローチ方法の立案)
・施策ごとの行動計画の立案
ステップ②:営業施策の実行
・アポイントの取得
・訪問(問題の本質のヒアリング)
・訪問(クロージング)
ステップ③:営業施策の効果検証と改善
・問題の抽出
・改善策の実行
2-1.「①営業施策の立案」に絶対に必要な2つのスキル
法人営業の第1ステップは「営業施策の立案」となります。
売上目標を設定し、現状で予想される売上の着地予想とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるための営業施策を立案します。
具体的には、どんなターゲットに対して、どのようにアプローチするか、その結果、どれくらいの売上を見込むか。また、いくつの施策を並行して実行するか、実行する具体的なスケジュールをどうするか、などを考えます。
目標達成できるかどうかは、施策の立案段階でほぼ決まりますので、この第1ステップはとても重要な位置づけとなります。
このステップで絶対に必要なのは、「仮説立案力」と「目標達成力」の2つのスキルとなります。なぜなら、この2つのスキルがないと適切な目標設定とターゲット設定、アプローチ方法の設定ができないからです。
具体的にそれぞれのスキルが活用されるシーンを解説します。
仮説立案力が求められるシーン
新たな施策による売上目標の設定
具体的には、今の営業活動を続けると売上予測はどうなるのか?、営業活動の改善でどれくらい売上は増える可能性があるのか?、その結果、目標売上と予測とのギャップはどれくらいに縮まるか?といったことを仮説立てて考えます。
仮説立案力が弱いと適切な目標設定ができないため、目標を達成する可能性が大幅に下がってしまうことになります。
営業施策の立案(ターゲット設定)
とりわけ、新規開拓の営業においては、この仮説立案力が極めて重要となります。なぜなら、ニーズの顕在化しているお客様は競争相手が多く、なかなか契約にならないため、ニーズの潜在化しているお客様を開拓する必要があるからです。
具体的には、○○なお客様であれば○○な点に困っているのではないだろうか?、〇〇な点に困っているのであれば、それはこの先○○というより大きな問題に発展してしまうのではないだろうか?といった仮説を立てる必要があります。
仮説立案力が弱いと適切なお客様にアプローチすることができず、大きな成果につながりづらいということになります。
求人広告を提案するターゲット(お客様)を考えるとき、他社で求人広告を出している企業はもちろん最優先となりますが、ニーズが顕在化しているので競争は極めて激しくなります。
そこで、成果を上げられる営業担当者はニーズの潜在化しているお客様を探します。現在、他社では求人広告を出してはいないけれども、いずれは出すことを検討しているお客様を探すわけです。
具体的に以下のような仮説を立てます。
採用活動に力を入れる会社は
・成長意欲が高いから本業の広告出稿を積極的に行っているかもしれない
・採用活動だけでなく、その後の社員育成に力を入れているかもしれない
・社長や人事担当者が積極的にセミナーや研修に参加しているかもしれない
これらの仮説に基づいて、業界専門誌に広告出稿をしている会社をピックアップしてみたり、経営者勉強会や採用関連の研修に参加している会社をピックアップしてみたりするわけです。
そして、それぞれの会社に、テレアポをするのがよいのか、DMを送るのがよいのか、共通の知り合いを見つけて紹介をもらうのがよいのか、といったアプローチ方法を立案するのです。
目標達成力が求められるシーン
施策ごとの行動計画の立案
具体的には、仮説で選定したターゲットは何社あるのか?、計画したアプローチ方法で何社のアポイントが取得可能なのか?、そこから何社の契約取得が可能なのか?、その結果、いくらの売上が見込めるか?、足りない売上を埋めるために追加施策が必要か?といった緻密な目標達成計画を立案することが必要となります。
仮説立案力と重なる部分も多いですが、目標達成力が弱く、この目標達成計画が緻密でないと、目標の達成の可能性は低くなります。
2-2.「②営業施策の実行」に絶対に必要な3つのスキル
法人営業の第2ステップは、営業施策の実行となります。
第1ステップで立てた営業施策を愚直に実行し、完遂することです。具体的には、ターゲットにアポイントを取り、問題の本質をヒアリングし、問題解決のための提案を行い、契約の獲得を行うことになります。
いくら緻密な目標計画が立てられても、この実行力が低ければ、目標達成はできませんので、とても重要なステップとなります。いわゆる法人営業活動のメインの実務となります。
このステップで絶対に必要なのは、「ヒアリング力」、「コミュニケーション力」、「プレゼンテーション力」の3つとなります。なぜなら、この3つのスキルは、お客様と直接接して商品やサービスを販売するための対人スキルの根幹となるからです。
具体的にそれぞれのスキルが活用されるシーンを解説します。
ヒアリング力が求められるシーン
訪問(問題の本質のヒアリング)
具体的には、お客様が今直面している問題はなにか?、その問題を引き起こしている根本となる原因はなにか?、今の問題を放置しているとこの先さらにどんな問題に繋がる可能性があるか?といった問題の本質を質問することによってあぶり出します。
また、あぶり出した上で、お客様自身に認識してもらい、解決への強い欲望を引き出すことも重要となります。
ヒアリング力が弱いと問題の本質が見抜けないので、サービスや商品の販売確率は低くなりますし、仮に販売できたとしても、本来の問題が解決できず、成果の創出やリピート獲得の可能性が低くなります。
求人広告の営業において重要なのは、採用上の問題の本質をヒアリングすることです。
採用活動の本来の目的は、人材を採用することではなく、人材を採用した上で、採用した人材が早期に戦力となり長く活躍してくれることです。そのための採用活動として何がネックになっているのかをヒアリングする必要があります。
ですので、どのような採用活動を行っていて、どれくらいの応募者がいるのかといった状況を聴くだけでなく、最近採用して活躍している方の特徴や逆に早期に退職してしまった方の退職理由、会社のサポート体制なども聴くことが大事となります。
その結果、単純に応募者を増やしただけでは一時的に採用はできても、定着しない可能性があると判断した際には、採用後の教育体制の見直しや社内コミュニケーション強化の研修の導入を提案するといったこともあるのです。
ヒアリング力は、お客様の問題の本質を捉えて、課題解決に通じる提案の糸口をつかむことができるようになるという点で、法人営業には欠かせないスキルとなります。
コミュニケーション力が求められるシーン
訪問(問題の本質のヒアリング)
お客様の抱える問題の本質を把握する際にコミュニケーション力が求められます。
具体的には、お客様の事業やサービス内容に関心を持って質問したり、お客様からの質問に誠実に答えたりすることで、スムーズな意思疎通を図り、早い段階で信頼関係を構築します。この信頼関係の構築が、ヒアリング力の発揮にも繋がります。
コミュニケーション力が弱いと、問題の本質に関する効果的なヒアリングはできません。なぜなら、人は、信頼関係のおけない人にむやみに自分の困っていることや内面を伝えるのは避けるからです。
プレゼンテーション力が求められるシーン
訪問(クロージング)
訪問の最終段階、商品やサービスの説明をし、契約獲得のクロージングをする際にプレゼンテーション力が求められます。
具体的には、商品やサービスの利点を説明するだけでなく、商品やサービスが、前段階のヒアリングで掴んだ問題の本質をどのように解決するかというお客様の利益を説明します。
そして、その利益を得るために、自社とお客様がそれぞれどのような役割を果たす必要あるのかを確認し、必要であればお客様に具体的な行動を起こしてもらいます。
プレゼンテーション力が弱いと、お客様は検討するだけで、具体的な契約に繋がる可能性は低くなります。
求人広告の営業において、プレゼンテーション力が求められるのは、求人広告の価値を正しく理解してもらう必要があるからです。
広告効果を最大限に出すためには、お客様の協力が欠かせません。企業の魅力や仕事のやりがい、厳しさを求職者に伝えるには、社員を取材することによって生の声を聴くことが重要だからです。
この取材にどれだけ積極的に協力してくれるかによって原稿(求人広告)の質が大きく変わります。
プレゼンテーション力が弱いと、取材に積極的に協力してもらえず、不十分な情報量の求人広告の作成にとどまり、思うような成果の創出ができないといったことが生じる可能性があるのです。
2-3.「③営業施策の効果検証と改善」に絶対に必要な2つのスキル
法人営業の第3ステップは、営業施策の効果検証と改善となります。
第2ステップで実行した営業施策が結果としてどうだったか、成功要因や失敗要因を分析し、成功したのであれば次に活かし、失敗したのであれば改善して再度実行することが求められます。
いわゆるPDCAサイクルと言われる活動ですが、このPDCAサイクルを回していくことが法人営業のレベルを上げていくのにとても重要となります。
このステップで絶対に必要なのは、「論理的思考力」、「問題解決力」の2つとなります。なぜなら、この2つのスキルが、実行した営業施策における具体的な問題点を抽出し、効果的な対策を立案するための根幹となるスキルだからです。
具体的にそれぞれのスキルが活用されるシーンを解説します。
論理的思考力が求められるシーン
問題の抽出
営業施策を実行した後に、そこで生じた問題を抽出する際に論理的思考力が求められます。
具体的には、計画が想定通りに進まなかった要因はどこにあるのか、要因は1つなのか複数なのか、それらの要因と結果にはどのような因果関係があるのかなど、必要な要素を漏れなく、ダブりなく考えることが重要となります。
論理的思考力が弱いと問題の原因となっている必要な要素を洗い出せませんし、問題と原因の因果関係をつかめないため、効果的な問題解決策を立案できる可能性が低くなります。
問題解決力が求められるシーン
改善策の立案
問題点を抽出したあとに、具体的に改善策を立案する際に問題解決力が求められます。
具体的には、論理的思考によってあぶり出した問題を解決するのに、何から手を打っていくのが一番効果的なのか、一番はやいのかといった優先順位を考えたり、どのような改善の仕方を行うことが効率的なのかという方法を考えることが重要となります。
問題解決力が弱いと、問題の本質を解決する道筋が提示できないので、目標達成へのモチベーションをアップしたり、営業施策を素早くブラッシュアップさせたりする可能性が低くなります。
3.法人営業のスキル習得に有効な方法

なぜなら法人営業のスキル、中でも営業活動の根幹となる第2ステップで必要となる対人スキルは、お客様に実際に提案活動を行う中でしかなかなか磨かれないからです。
もちろん、単に営業現場に出ればよいということではありません。営業活動を行う前に、実際の営業現場を想定し、仮説を元にロールプレイを行い、実際に営業活動を実践し、実践した結果をケーススタディとして振り返る。
この1.ロールプレイ→2.実践→3.ケーススタディのサイクルをしっかり回すことがスキルアップの最善の方法です。
そして、このサイクルを回すことに加えて、読書や研修によって理論を学んだり、基礎スキルを高める訓練をすることでさらにスキルが高まるスピードが高まったり、高度なスキルが身に付きます。
4.まとめ
この記事では、法人営業に絶対に必要な7つのスキルについて解説しました。
①仮説立案力(限られた情報から仮説を想定する力)
②ヒアリング力(お客様の抱えている問題の本質を引き出す力)
③論理的思考力(物事を筋道立てて考える力)
④コミュニケーション力(お互いの意思疎通をスムーズにする力)
⑤プレゼンテーション力(相手に変化や行動を促す力)
⑥問題解決力(問題を解決する力)
⑦目標達成力(目標を計画する力とやりきる力)
いずれも簡単に習得できるものではありませんが、ロールプレイ→実践→ケーススタディを繰り返すことによって着実にレベルアップします。そして、各スキルがレベルアップすればするほど、お客様の抱える問題を解決するスピードや質が高まりますので、よりお客様の役に立てるようになります。また、その結果、会社全体や個人の目標達成を実現する可能性が高まることにもつながります。
この好循環が体感できると法人営業の仕事のやりがいも増すでしょう。
個人的に20年以上法人営業の仕事に携わっていますが、本当に面白い仕事です。スキルアップすることでこの面白さをどんどん高めたいですね。