
転職するのが怖い、転職してもうまくいくかどうか不安、とお感じの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに転職には不安が多く、まだまだ抵抗感のある方もいらっしゃると思います。しかし、私は、転職をするかどうかは別として、転職を全く検討しないことは人生において損だと考えています。
なぜなら、転職とは何かを成し遂げるための手段だと考えているからです。
一般的に、転職の意味は、
転職:一つの職から他の職に転ずること。職業をかえること。【出典:広辞苑】
とあるように、「行為」として捉えられますが、これでは転職の持つ、本来の価値を表せていません。
弊社では、転職とは、「行為」としての意味だけでなく、「手段」としての意味が大きいと捉えています。転職とは、「○○するための手段」という捉え方です。
〇〇については後述するとして、転職を手段として捉えることによって、転職の持つ価値が高まります。なぜなら、手段を検討するプロセスにフォーカスすることができるからです。
転職という手段を検討するプロセスにおいて、自分の人生設計について再考することが、転職の価値なのではないでしょうか。
転職した結果、人生設計が大きく崩れてしまった。
転職した結果、環境や生活が好転するどころか余計悪くなってしまった。
そんな声を聴くと、転職が怖くなるのは当然です。
しかし、転職が手段であることを理解すると、それは転職自体が問題なのではなく、転職に至るプロセスに要因があることがわかると思います。
ですので、私がお伝えしたいのは、転職という選択肢は持っておくべきだということ。決して転職を薦めているわけではありません。
この記事では、転職の大きな2つのパターンを解説するとともに、転職が何のための選択肢であるのか、転職によってどんなメリットがあるのかなどを解説します。
この記事を読んでいただければ、転職を検討しないことがなぜ損なのか、転職を恐れないためには何を知っておかなければいけないのか、転職をチャンスとしてとらえるということがどういうことなのか、など転職の本来の価値が分かります。
その結果、転職の本質を捉えることができると思います。
1.転職とは
1-1 転職の2つのパターン

それぞれについて解説します。
①不満から逃げるための転職
不満要素 | 不満内容 |
労働環境 | ・残業時間が長い ・有給休暇を取得する余裕がない ・無駄な会議が多く生産性が低い |
評価 | ・評価基準が曖昧 ・努力や成果が正当に評価されない |
人間関係 | ・仕事以外のコミュニケーションが少ない ・価値観の合う人が少ない ・上司とそりが合わない |
給与 | ・同世代の友人と比べて給与が低い ・昇給が少ない(ない) ・給与の天井が見えている |
昇進 | ・昇進するポジションがない ・昇進スピードが遅い |
やりがい | ・エンドユーザーに直接関われない ・社会貢献の実感がわかない |
1つ目は、不満から逃げるために転職をするケースです。
組織で仕事をしていると様々な不平不満が生まれます。不満となる要素としては、労働環境であることもあれば、人事評価であったり、人間関係、給与、昇進、やりがいなどということもあるでしょう。そこから逃げるために転職するというのがこのケースです。
不平不満が転職を検討するきっかけとなるのはもっともで特に悪いことだとは思いません。しかし、注意しないといけないのは、不平不満の原因をしっかり把握し、改善するための方法を考えておかないと、転職が手段ではなく、目的化する恐れがあるということです。
確かに、ブラック企業に勤めているなどあまりにむごいケースは逃げることが目的化しても仕方がありませんが、逃げた後にどうしたいかという目的を明確にしておかないと、あまりよい結果を生まないことが多いことは留意しておく必要があります。
②新たなチャレンジをするための転職
分野 | チャレンジ内容 |
知識 | ・別分野の知識を得たい ・もっと専門性の高い知識を得たい |
スキル | ・今のスキルをもっと高めたい ・今のスキルを他の分野で試してみたい ・別分野のスキルを身につけたい ・市場価値の高いスキルを学びたい |
ポジション | ・リーダーシップの発揮できる環境で働きたい ・得意分野に専念できるポジションが欲しい ・組織を率いてみたい ・決裁権を持ちたい |
2つ目は、新たなチャレンジするために転職をするケースです。
新しい知識やスキルを身につけたい、新しいポジションで働いてみたいなど、比較的アグレッシブな目的を持って転職を検討するケースになります。
昨今、テクノロジーがどんどん進化するなど、時代の変化が激しいため、ビジネスで求められる知識やスキルも日々変化しています。専門性が求められる一方、汎用性も求められるなど、場合によっては1つの会社でずっといることがリスクになる可能性すらあります。
最近では、リスキリングというように学び直しが迫られている状況でもありますので、新たなチャレンジをするために転職を視野に入れるケースは今後も増えるでしょう。
ただ、今の職場に本当にチャレンジをする余地がないかどうかだけは確認しておくことが大事です。自分自身に課題があって、今の職場でチャレンジできないことは、次の職場に行ってもチャレンジできないもの。外的要因と内的要因を明確に分けて考えることが欠かせません。
1-2 転職とは自分の可能性を広げるために必要な手段である
結論からお伝えすると、弊社では、転職とは、自分の将来の可能性を広げるために必要な手段であると捉えています。
なぜなら、前述のいずれのパターンにおいても、転職という選択肢を持たなければ、課題を解決できないばかりか、現状を打破する道筋すら描けない可能性が高いからです。
例えば、1つ目のパターンの不満を解消したいというケースの場合。
社内のコミュニケーションが少ない、生産性が低いといった不満に関しては、上司に掛け合ったり、自らリーダーシップを発揮することで大きな変化を起こせるかもしれません。しかし、自分が正当に評価されていない、昇進するポジションがないといった不満に関して、社内への働きかけだけで、すぐに変化は期待できないということはないでしょうか。
自社を自ら変えるという強い覚悟も必要ですが、転職という選択肢を持つことで心に余裕ができたり、視野が広がることも事実です。そういう点で、転職は自分の将来の可能性を広げるための重要な手段となります。
最近では、労働環境、人事評価、給与、いずれにおいても社員が働きやすいように柔軟に仕組みを変えている会社が増えています。この手段を行使するかどうかは別として、手段を検討するプロセスにおいて、自分の不満が独りよがりであったことに気づくかもしれませんし、他の組織を見ることで自社内での改善の可能性が見えるかもしれません。
また、2つ目の新たなチャレンジをしたいというケースの場合。
新たな知識やスキルを身につけたいという意欲を持っていても、自社が時代の変化に弱い組織だったり、新たなチャレンジに寛容でない組織だった場合どうでしょうか。転職という選択肢を持つことで視野を広げなければ、自らの可能性はどんどん狭くなっていく恐れがあります。
たとえば、今、経理事務の仕事をしているとします。経理事務の仕事はとても重要な仕事ですが、この先、多くの担当業務がAIに代替されていくことは想像できます。もちろん、今の組織の中で、AIに代替されない分野のスキルを磨き、経理部門の業務設計をしたり、統括するポジションを目指すことはできますが、別分野のスキルを身につける以上に難易度が高いかもしれません。結果、将来的に自分の業務やポジションがなくなる可能性もあります。
転職という選択肢を持つことで、今の仕事の将来性を客観的に分析したり、この先、身につけていきたいスキルを検討することが可能になるでしょう。そういう点で転職は、自分の将来の可能性を広げるための重要な手段となるのです。
以上が、弊社が、転職は自分の将来の可能性を広げるための手段であると考える理由です。
1-3 転職により自分の可能性を広げる3つのパターン
前章で、転職は自分の将来の可能性を広げるための手段であることをご説明しました。この章では、実際に自分の可能性をどうやって広げていくか、3つのパターンをご紹介します。
①培ったスキルを別の分野で活かす
ビジネススキルには、業界や職種が違っても活かせる汎用性の高いスキルが多くあります。例えば、コミュニケーション能力や目標達成力、リーダーシップなどもその1つでしょう。
可能性を広げるという点では、単に培ってきたスキルを活かすだけでなく、別分野の新たな知識や経験を加えることで、さらにスキルをブラッシュアップするということもできます。
また、特に成長分野への転職となれば、業績UPや組織の拡大に伴い、新たな役割やポジションを得るチャンスが増えることも考えられます。
「ちばキャリエージェント」で関わったケースですが、エンターテインメント業界での接客職から広告会社の営業職に転職した方の事例です。
この方は、新卒でエンタメ業界に入り、1年目で大型店の副店長を経験しました。そこで業績を向上させたことが評価され、2年目から店長に。その後も7年間の勤務の中で複数の店舗の店長を経験してきました。
子供が生まれ、育つにつれ、週末は家族で一緒に過ごしたいという思いが強くなりました。店長の仕事は楽しく、特に仕事への不満はありませんでしたが、労働環境を変えるため、土日休みの法人営業への転職を決意されました。
広告会社への転職後は、持ち前のコミュニケーション能力だけでなく、店長職として培ってきたリーダーシップを発揮し、制作部門や物流部門など、他部署の人を巻き込んで積極的に活動したようです。大きな実績を上げ、2年目でマネージャーに昇格するなど、活躍されています。
1つの業界で培ってきたスキルを他業界で活かして可能性を高めた好例です。
②新たなスキルを身につける
新たな分野でのスキルを得ていくことは、転職市場における市場価値を高め、自分の可能性を高めるということは想像に難くないと思います。
100人に1人のレベルのスキルを3分野で持つと、100万人に1人の存在になれる
また、前章でもお伝えしましたが、変化の速い今の時代、長年かけて身につけてきたスキルが陳腐化してしまうということも十分あり得ます。その際に大事なのはリスキリングとして新たなスキルの習得にチャレンジすることです。
新しい技術や価値観を持つことで、やれることが増える、新しい働き方ができる。そんな時代である一方、裏返すと、廃れた技術や価値観に固執することで、IT に代替されたり、必要とされなくなる。という時代でもあります。新たなスキルの習得は、攻めだけでなく守りという点でも自分の可能性を広げますね。
僭越ながら私自身の転職事例です。
私は新卒で保険会社に入社し4年勤めていましたが、旧態依然とした大きな組織になじめませんでした。サラリーマンが向いていないことを痛感し、経営者になりたいと考えたのですが、恥ずかしながら、大した営業力もなく、経営に関する知識もありませんでした。
そこで、営業力だけでなく経営に関する知識やスキルを身につけるために転職を決意。当時、起業家輩出機関を標榜していたベンチャー企業に転職しました。そこで営業スキルに加え、経営戦略や経営計画の立て方なども学び、最終的に起業するに至りました。
この転職がなければ起業することはできなかったでしょう。転職により、新たなスキルを身につけ、可能性を広げた事例だと思います。
③新しい働き方を手に入れる
最近は、リモートワークが普及したり、副業を奨励する企業が増えるなど、新たな働き方が可能になってきています。様々なスキルを身につけていないと難しい話ではありますが、新しい働き方に寛容な会社に転職することで、人生設計の幅が大きく広がります。
例えば、最近yahooやNTTのニュースが話題となりましたが、居住地制限のない会社に勤めることで、拠点のない地方や離島に住んで、必要な時だけ出社するということも可能ですし、男性の育児休暇取得に協力的な会社で、育児に徹底的に時間をかけるということも可能です。
はたまた、副業を奨励している会社で自分の趣味を副業にし、収入をUPするということもできるでしょう。
働き方改革に前向きな考え方の会社に転職することで、人生設計の選択肢が増えることは間違いありません。
こちらも自社の事例で恐縮ですが、弊社では面白い働き方をしている社員が何名もいます。
必要なスキルを身につけることで、様々な働き方を受け入れてくれる会社に入ることで、人生の過ごし方や生き方を大きく変える事例ではないでしょうか。
2.転職の結果、得られる可能性のあるメリット
すでにお気づきの通り、転職の結果、具体的に得られるメリットは転職の目的によって大きく変わります。ですので、一概にこれが転職のメリットですと言うことはできません。
ただ、それぞれの目的ごとに、どんなことが実現可能なのかという可能性を知ることで、現状の不満を解消したり、新たなチャレンジをしたりするためのイメージが湧きますので、参考になると思います。
目的 | メリット |
労働環境の改善 | ・残業時間が減る ・有給休暇の取得率が上がる ・土日休み(もしくは平日休み)になる ・生産性の高い働き方を体験する ・家族やプライベートの時間が増える ・居住地の縛りがなくなる ・出社の必要がなくなる |
待遇の改善 | ・給与がアップする ・昇給スピードが速くなる ・明確な評価基準のもとで働ける ・目指せるポジションが明確にある |
知識・スキルのUP | ・専門性の高い知識やスキルを身につける ・複数分野のスキルを持つ希少価値人材になる ・組織に属さないでも稼げるスキルを身につける ・マネジメントスキルを身につける |
人間関係の改善 | ・ソリの合わない上司と離れられる ・前職と現職の人脈を繋げられる ・仕事とプライベートの人脈を繋げられる ・価値観のあった仲間と出会える |
働き方の改革 | ・労働時間に縛られない働き方をする ・副業で稼ぐ ・2拠点生活や移住生活を楽しむ ・ワーケーションを楽しむ |
3.まとめ
転職とはというテーマで、弊社が考える転職の定義について解説させていただきました。
不満を解消するための転職であっても、新たなチャレンジをするための転職であっても、転職は自分の将来の可能性を広げてくれる手段になることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
転職によって、すぐに自分の思うとおりの結果が得られなかったとしても、プロセスがしっかりしていれば、自分の将来の可能性を広げてくれることは間違いありません。
ぜひ、人生設計の中に転職という選択肢をもって、あくまで手段として転職を検討してみてはいかがでしょうか。