
求職者と面談をしていてよく相談を受けるのが、ノルマのない仕事に就きたいという相談です。特に、営業=ノルマというイメージが強いようで、営業職だけは避けたいという相談を受けるケースも少なくありません。
確かに、ノルマがあると聞くといい気はしませんよね。
ですが、私はノルマがある仕事は嫌だというように短絡的に捉えないほうが良いと考えています。
なぜなら、実は、ノルマのない仕事は極めて少ないですし、ノルマのないことが必ずしも良いとは限らないからです。
この記事では、そもそもノルマとはなにか、ノルマのない仕事とはなにかを始め、ノルマにどう向き合っていけば良いのかについて解説したいと思います。
ノルマのある仕事は嫌だ!では、なかなか仕事の本質やキャリアアップへの道筋は見えてきません。改めてノルマをテーマに仕事や転職について考えてみましょう。
1.ノルマのない仕事ってどんな仕事?
1-1.ノルマとは
そもそもノルマとはなんでしょうか?
「ノルマ」という言葉はロシア語が語源となっているようです。
ウィキペディアによると、
ノルマとは、個人や団体に対して国家や組織が強制的に割り当てた労働の目標量であり、多くの場合は労働の成果のみならず時間的な制限も付加される。
とあります。
ですので、仕事におけるノルマとは、一定期間内に一方的に割り当てられる作業であり、特に成績や数字で表されるという特徴があるものだと捉えると良いでしょう。
確かに、一方的に割り当てられる作業というのは、やらされ感があって嫌ですね。
ですが、仕事において、一定期間内に割り当てられる作業量が決まっていないということがあるでしょうか?
一般的に仕事には、作業量の目安があるでしょうし、期待値が存在するはずです。言い方の問題ではありますが、一定期間内に割り当てられる作業量や成果の目安、期待値のことを一般的には「目標」といいます。
ですので、ノルマというのは、この仕事上の「目標」を押し付けられる感覚をネガティブに表現したものだと言えるでしょう。
ここで私が伝えたいのは、ほとんどの仕事において、「目標」は存在するということです。押し付けられる感があるかどうかは別にして、ノルマのない仕事=目標のない仕事は極めて少ないということを把握しておきたいところです。
そして、後述しますが、目標のない仕事を選ぶことは長期的なキャリアを考える上で、必ずしも得になるとは限らないということです。
1-2.ノルマのない仕事の特徴とは
前章でノルマのない仕事は少ないとお伝えしましたが、全くないわけではありません。ここでは、ノルマのない仕事の特徴を考えてみたいと思います。
前章の定義をもとにすると、ノルマがない仕事とは、一定期間に割り当てられる作業量や成果が決まっていない仕事となります。
それはどういう仕事かと考えると、作業量や成果に関係なく、業務を一定時間担当することを求められる仕事などが当てはまるでしょう。
例えば、スーパーやコンビニの接客の仕事などはイメージしやすいかもしれません。忙しいことも暇なこともありますが、定められた時間、レジ打ちなどのお客様対応を行う仕事なので、ノルマがない仕事と言えるでしょう。
また、ノルマがない=強制感が少ないというように捉えると、求められる水準があまり高くない仕事もノルマがない仕事と捉えて良いのかもしれません。
そんなことから、ノルマのない仕事の特徴をまとめてみると、以下のような特徴があると考えられます。
ですので、ノルマのない仕事を探したいとなるとこれらの条件を満たしそうな仕事を探すと良いのではないでしょうか。
ただし、ここでお伝えしたいのは、これらの仕事には注意しておきたい別の特徴もあるということです。
それは、スキルアップや成長がしにくいということです。
なぜなら、一定のペースで単純業務をこなす仕事は、もちろん初めは苦労しますが、慣れるとルーティンワークになるからです。特に深く考えたり工夫をしなくても、業務がこなせるようになると特段成長を求められることもありません。
そのため、給与アップをしにくいという特徴もありますし、特別なスキルを求められなず代替が効くということから、リストラの対象になりやすいという特徴もあります。
ですので、ノルマのない仕事は、目先では楽でメリットが多いように感じますが、長い目で見るとリスクもあるとも言えるでしょう。特別なスキルが身につかないことで、転職市場における価値も高まりにくいということも踏まえて、長期的な視点で仕事(キャリア)を考えることが重要ですね。
1-3.ノルマがない仕事の例
①接客の仕事
接客といっても、レジ打ちや受付といった、接客スキルによって売上が変わりにくい仕事が当てはまります。
具体的には、
などが挙げられます。
同じ接客業でも、アパレルや家電店、ディーラーなどの接客業では、接客により販売するという成果が求められるので、ノルマ(目標)が発生する可能性は高いですね。
また、スーパーやコンビニの店員であっても、部門長や店長など売上を管理するポジションになると目標を強く意識して働く必要があることは認識しておく必要があるでしょう。
②事務職
ノルマがない仕事の1つは事務職です。
具体的には、
・一般事務
・総務事務
・経理事務
などの仕事が挙げられます。
ただし、事務職といっても総務職、経理職と専門職に近い役割を担うようになるとノルマ(目標)が発生する可能性は高いでしょう。
総務であれば期日までに規定や書類を整備することを求められたり、経理であれば締め日前後は強制的に業務量が増えることが考えられます。
③警備・清掃
ノルマがない仕事の1つは警備・清掃の仕事です。
具体的には、
・施設警備
・交通誘導
・ビルメンテナンス
・清掃スタッフ
などの仕事が挙げられます。
これらの仕事は、一定時間担当する、決められた場所を担当するということで、ノルマのない仕事としてイメージしやすいかもしれません。
④製造スタッフ
ノルマがない仕事の1つは製造スタッフです。
具体的には、
・ライン工
・機械オペレーター
・生産管理
などの仕事が挙げられます。
厳しい目標設定が少ないということで、ノルマのない仕事として挙げていますが、一定の受注量はこなさないといけませんから、繁忙期やなにかのトラブルで工程が遅れた場合は、納期に間に合わすための業務が発生する可能性がありますね。
1-4.ノルマのある仕事の例
あくまでノルマと言っても、目標設定があるというレベルでのご紹介です。強制的に目標を与えられたり、目標達成を強要されたりといったことではありませんので、誤解のないようにお願いします。
①営業
②エンジニア
ノルマがある仕事の1つはエンジニア職です。
③接客業
アパレルやディーラー、家電店などの専門店では個人としての売上実績を求められるでしょうし、飲食店においても接客による売上UPを期待される職場は数多くあるでしょう。
2.ノルマとうまく付き合う方法
ノルマに対する捉え方を変えること、そして、それを可能にする環境に身をおくことです。
これらをテーマに、ノルマとうまく付き合う方法として3つのポイントを紹介します。
2-1.ノルマ=目標と捉える
1章で、ノルマとは、「目標」を押し付けられる感覚をネガティブに表現したものだと説明しました。であれば、押し付けられる感覚がなくなれば、ノルマを肯定的に捉えやすくなります。
そこで、ノルマをあえてノルマではなく、目標として捉えることができると良いでしょう。
先程、ノルマのない仕事の特徴として、目標のない仕事は自己成長になかなか繋がらないという説明もしました。自分自身の長いキャリアを考えると、新しいスキルを習得したり、今あるスキルをブラッシュアップすることは欠かせません。組織の中では絶対評価だけでなく相対評価もされますから、給与アップやポジションアップを考えるとスキルを磨くことはとても大事なことです。
そのためには、少し頑張らないと届かない目標を設定することはとても重要なのです。ですから、ノルマを強制的に与えられる数値や成果ではなく、自分を成長させるために必要な目標として、捉えることが大切です。
ですので、ノルマとうまく付き合う方法の1つ目は、ノルマを目標として肯定的に捉えることだと思います。
2-2.ノルマ=目標と捉えられる会社(環境)を選ぶ
なぜなら、自分自身の意識を変えても、目標を強制的に強いている会社(環境)では、意味をなさないからです。目標に対するネガティブな気持ちは払拭できないでしょうし、高いストレスもかかったままとなってしまいます。
ノルマ=目標と捉えられる会社というのは、例えば、目標設定の根拠を説明してくれたり、目標達成するための戦略や道筋を一緒に考えてくれたり、サポートしてくれる会社です。
それらの会社の具体的な特徴としては、人事評価制度が整っていたり、上司や先輩との定期的な1on1の面談があったりします。そもそもこれらの会社では、ノルマという表現はせず、目標という表現をする事が多いでしょう。目標とは強制的に与えられるものではないことを理解しているからです。
転職活動の際にこれらの会社を見分けるためには、人評価制度や上司とのレビュー体制について面接で確認することが大事です。どのように評価されるのか、評価のプロセスがどうなっているかを丁寧に説明してくれる環境の会社であれば、ノルマという強制感は感じにくいでしょう。
ですので、ノルマとうまく付き合う方法の2つ目は、ノルマ=目標と捉えられる会社を選ぶということだと思います。
2-3.目標を達成するという達成感を楽しむ
達成感を感じる瞬間は様々です。
例えば
・目標を達成するための計画がその通りに実現した
・最後の最後に劇的なできことが起きて目標が達成できた
・目標達成の成果が給与や評価に直結した
など。
具体的な売上が目標になることもありますし、納期までに仕上げることが目標になることもありますし、改善策を見出すことが目標になることもあるでしょう。いずれにしても、目標を達成し、その達成感を味わうことができれば、目標を設定したり、目標達成を目指すことの重要性を実感することができます。
スポーツや趣味の世界を想像すると目標達成を追いかけた経験をお持ちの方は多くいらっしゃると思いますが、仕事においても目標設定や目標達成経験はとても重要なのです。
3.まとめ
この記事では、ノルマとはなにか、ノルマのない仕事とはなにか、ノルマにどう向き合っていけば良いのかといったことについて解説しました。
ノルマのある仕事は嫌だ!という気持ちは多くの人が持つものでしょう。しかし、ノルマをネガティブなものではなく、目標として肯定的に捉えることで、仕事選びや会社選びの幅が広がったり、軸が変わったりするものです。
ノルマ=嫌という条件反射するのではなく、ノルマとはなにか、ノルマを肯定的に捉えるにはどうしたら良いか、ノルマを肯定的に捉える会社を見つけるにはどうしたらよいか。そんな視点で、ノルマを考えてみてはどうでしょうか。
ノルマという言葉が持つネガティブな印象に振り回されずに、冷静に捉えられるとよいのではないかと思います。