特に、営業や接客に苦手意識のある方にとって事務職はとても魅力的な仕事ですよね。確かに、事務の仕事のあり方は今後もどんどん変化しますが、私は、事務職という職種自体はなくならないと考えています。ただし、求められる仕事の中身は変わるでしょう。
ですので、事務職としてこの先も長く仕事を続けていくためには、事務職に求められる役割やスキルを理解した上で、自分自身をスキルアップさせていくことが必須となります。
この記事では、事務として生き残るために、組織から絶対に必要とされる価値の高い事務になるために、どうやってスキルアップすればいいのか、またどんなスキルをスキルアップすれば良いのかといった方法論を解説します。記事を読み終わったころには、価値の高い事務になるための第一歩が踏み出せているでしょう。ぜひ、参考にしてみてください。
1.事務のスキルアップの方法
今の時代背景を考えると、そう思って焦っている方もいらっしゃると思います。本来、スキルアップを考える時には、何のために、何のスキルを、どのようにレベルアップしたいを見極めてからスタートする事が大事です。具体的には以下のようなステップとなります。
①日常業務の中でスキルアップする
次章で解説しますが、事務に求められる、コミュニケーション能力や業務改善能力といったスキルは、その組織特有の事情を考慮した上で発揮されるものです。今の職場で、今の上司や同僚、他部署のメンバーとのやり取りの中で発揮される必要があるのです。
そのような組織の中で発揮すべきスキルを高めていくためには、日常業務の中で、目的意識や目標を持って業務に関わることが一番スキルアップに効果のある方法だと私は考えています。
②読書を通じてスキルアップする
なぜなら、これらの記事を読むことで、業務の改善のヒントや改善事例を収集することができ、事務として高いレベルでの知見を積み重ねることができるからです。
これも次章で詳しく解説しますが、これから先、事務に求められるのは業務改善や業務設計のスキルです。それらを磨くためには、改善事例や改善のための手法に関する知識を数多く持っておくことが大事。
そのためにも、様々な媒体を通じて、ヒントを拾っておくことが重要だと思います。
③教育機関に通ってスキルアップする
ただ、事務としてのスキルアップに直接通じるプログラムはなかなか多くはないかもしれません。
次章でご紹介するスキルの中で教育機関で学べるのは、ITスキルなどが中心になるでしょうか。教育機関で学ぶことは資格取得にも繋がりますが、資格に関しては、3章のキャリアチェンジのテーマでご紹介したいと思います。
④副業を通じてスキルアップする
お勧めする理由は、副業として業務を行うことで、自分の仕事の水準をしっかり認識することができるからです。
正社員として固定給をもらうのとは違い、副業で収入を得る際は、一般的に業務単位で対価が発生します。これは、自分の業務そのものが第三者に評価されるということなのです。
納めたアウトプットの結果、依頼主に満足してもらうこともあれば、クレームをもらうこともあるでしょう。他の組織で当たり前に求められている水準を知りびっくりすることもあれば、その水準に合わせることで自分の仕事力が上がるということもあります。
クラウドソーシングサイトで簡単に業務委託で仕事が受けられる時代です。小銭を稼ぐために副業をするのではなく、スキルアップのために、自分の事務スキルを試してみるために、という視点で副業に取り組むことも一つの選択肢だと思います。
2.事務としてスキルアップしたい3つの重要スキル
また、事務のスキルアップという点で、すぐに資格取得と結びつけるケースが多いのですが、私はあまり感心しません。
なぜなら、資格は対外的にスキルがあることの証明にはなりますが、資格を取ったからといって、本当に現場で役立つスキルを持っているとは言えないからです。
先程もお伝えしたとおり、その組織特有の事情を考慮した上で、業務改善や業務設計を行うのが事務だと考えるからです。
ただ、その領域の専門知識は得られるため、自分が新たな分野を開拓するのであれば有効です。
これらのケースは、事務からのキャリアチェンジにも繋がりますので、詳細は3章で触れたいと思います。では、私が事務がスキルアップすべきだと思う3つの主要スキルについて解説します。
①ITリテラシー
パソコンやエクセル、パワーポイントなどのITスキルは事務には必須ですよね。なぜなら、業務スピードや業務改善に直結するからです。
例えば、タイピングのスピードなどは地味なスキルですが、生産性と大きく関わりますから侮れません。エクセルの関数を使えるかどうか、ショートカットを使えるかどうかなども重要な要素です。
これらのスキルは当たり前として、私があえてITリテラシーと言うのは、PCスキル以外のITに関する知識、見識がこれから重要になるからです。なぜなら、業務改善のためには、様々なITツールを使いこなす必要があるからです。②コミュニケーション能力
③業務改善能力
業務改善には、大きく2種類あります。1つは業務を効率化させること、もう1つは業務の質(アウトプット)を向上させることです。前者は今行っている業務をより短い時間でより簡単に行うことで、後者は、今の業務の成果をより大きなものにすることです。
いずれにおいても、まず重要なのは、現状を把握するスキルです。今の業務フローのどこに課題があるのか、どこがボトルネックとなっているのかを掴む必要があります。そのためには詳しく観察したり、データ分析をすることで、課題を可視化することが求められます。
そしてもう1つ重要なのが、その課題を解決するための対策を立案するスキルです。例えば、業務フローの一部を省いたり、改良したりして効率化を図る、もしくは業務フローを再構築して、より高いレベルの成果を出すといった解決策の立案が求められるのです。
また、この対策を立案する際に、新たなツールやサービスの利用がとても有効となります。ここで、最新のITテクノロジーを使ったツールやサービスへのアンテナの高さ、いわゆる①のITリテラシーが活きてくることになります。
この業務改善のスキルを高めることで、組織の生産性の向上に貢献する価値の高い事務になれるのです。
続いて、業務改善能力を発揮して、交通費申請の納期を変更したり、自動的にアラートが出るようにしたり、申請を楽にするためのマクロを組んだりということを行うでしょう。(業務の効率化)
さらに、業務フローそのものを再構築することも検討します。suicaと紐付けて自動計算ができないか、カレンダーと連動して自動計算できないか、そんなITツールやサービスはないかなど、ITリテラシーを活かして業務全体の質を高めるのです。(業務の質の向上)
こうやって、営業交通費の精算の業務の効率化や業務フローの改善を行える事務が価値の高い事務となるわけです。
3.重要3スキルの具体的なスキルアップの方法
この章では、上述の3つのスキルを1章でご紹介した4つの方法で具体的にどのようにスキルアップするのかについていくつかの例をご紹介します。みなさんご自身の具体的なスキルアップの方法をイメージするのに役立てればと思います。
①ITリテラシーをスキルアップする方法
方法 | 具体的な行動の例 |
日常業務 | ・面倒な作業、無駄だと思う作業を書き出す。 ・その作業を自動化できるテクノロジーの分野を調べる。 ・上記に関する具体的なITツールやサービスを探す。 ・調べたツールの導入を検討する。 |
読書 | ・上記のテクノロジーの分野に関する書籍を読む。 ・TECK系の情報サイトやニュースを定期購読する。 |
教育機関 | ・上記に関する研修を行っている教育機関を調べ、受講する。 ・具体的なITツールを提供している会社のセミナーを受講する。 |
副業 | ・上記のITツールに関わる簡単な作業レベルの仕事を受ける。 |
■日常業務
ITリテラシーに関するスキルアップのための視点として、まず、面倒な作業、無駄だなあと感じる作業をなくすことができないかを考えるが重要です。実は、生産性の向上は「横着したい」という思いから発展することが多いのものなのです。(笑)
その上で、作業を楽にしたり、作業をなくしたりできるITテクノロジーの分野を調べ、具体的なITツールやITサービスを探します。例えば、AIやRPA、CMS、ノーコードアプリなど。そして、それらの導入を検討することでITリテラシーは高まります。
※読書などでITに関する知識が高まれば高まるほど情報がリンクし、想像する力が増していきます。
■読書
日常業務の中で関心を持ったITテクノロジーの分野に関する書籍を読んだり、それらに関するTECK系の情報サイトやニュースを定期購読とよいでしょう。また、具体的なITツールやサービスを提供している会社で、ブログやオウンドメディアを運営していることも多いので、それらも参考になります。
■教育機関
上記で関心を持った分野に関して詳細な知識を学べる教育機関を調べ、そこで行っている研修を受講するとよいでしょう。また、教育機関ではありませんが、具体的なITサービスやアプリを提供している会社のセミナーに参加することも有効です。
■副業
ITの知識がついてからではないとこのテーマの副業を行うのは難しいですが、ITツールやサービスに関する簡単な作業レベルの仕事を単発で受けてみると良いかもしれません。
②コミュニケーション能力をスキルアップする方法
方法 | 具体的な行動の例 |
日常業務 | ・依頼された業務の目的や意図をヒアリングし、真のニーズを把握する。 ・真のニーズを満たす解決策を考え、提案する。 |
読書 | ・「聴く力」や「伝え方」などコミュニケーションをテーマにした書籍を読む。 ・ビジネス関連のオウンドメディアでコミュニケーション関連の記事を読む。 |
教育機関 | ・コミュニケーション能力の向上をテーマにした研修を受講する。 |
副業 | ・クラウドソーシングサイトで、業務委託として仕事を受ける。 |
■日常業務
価値の高い事務に求められるコミュニケ―ション能力とは、本質を理解する力、相手の言っていることの真意を掴む力です。そのために重要なのは、依頼された業務の目的や意図を理解するために、ヒアリングをすることです。
ヒアリングの結果、依頼された業務すべてをやる必要がないということになったり、別のやり方のほうが良いといったこともあり得ますので、生産性に大きく影響するスキルとなります。
このヒアリングによって掴んだ真のニーズを満たすために先回りして業務を行ったり、業務の質を高めたりすることで、価値の高い事務に求められるコミュニケーション能力が高まっていくのです。
■読書
価値の高い事務に求められるコミュニケーション能力のテーマは、「聴く力」、「ヒアリング力」ですので、それらに関した書籍を読むのが良いでしょう。もちろん「伝える力」について学ぶことも欠かせません。
また、ビジネス関連のオウンドメディアで社内のコミュニケーションを題材にした記事を定期的に読むことも有効です。
■教育機関
コミュニケーション能力の向上をテーマにした研修を受講すると良いでしょう。中には、「伝え方」や「ヒアリング」といった個別テーマの研修もあるでしょうし、もっと事務に特化した「業務コミュニケーション」に関するテーマの研修もありそうです。
■副業
組織外から業務委託して仕事を受け、完了するまでのプロセスを通じて事務に役立つコミュニケーション能力が高まります。クラウドソーシングサイトなどを使って、どんな仕事でもよいので、業務委託として仕事を受けてみるとよいでしょう。
③業務改善能力をスキルアップする方法
方法 | 具体的な行動の例 |
日常業務 | ・業務を効率化するために業務フローの改善を検討する。 ・上記の改善に加えて、業務フローをゼロから再設計する。 |
読書 | ・現状把握力や問題解決能力の向上に関する書籍を読む。 ・業務改善に関するケーススタディの事例を読む。 |
教育機関 | ・業務改善能力の向上をテーマにした研修を受講する。 |
副業 | ・他社の業務フローを体感できる仕事や業務改善に関わる仕事を受ける。 |
■日常業務
①のITリテラシーのスキルアップとリンクしますが、業務を効率するために、業務フローの改善案を考えたり、業務フローを再設計することで業務改善能力が高まります。改善案を具体的に提案し、実行することでさらにレベルアップするでしょう。
■読書
業務改善や業務フローの再設計に関するスキルを高めるためには、「現状把握力」や「問題解決能力」をテーマにした書籍を読んだり、業務改善のケーススタディに関する知識を取得することが大事です。業務改善に関するケーススタディは、ビジネス系のオウンドメディアで紹介されていることが多いですし、読書ではありませんが、ビジネス系のテレビ番組も役立つことがありますね。
■教育機関
上記でご紹介した、「業務改善」や「現状把握力」、「問題解決能力」などをテーマにした研修を受講することで具体的なスキルアップが可能となります。
■副業
実際に業務改善のプロセスに関わってみることが重要なので、クラウドソーシングサイトなどを使って、他社の業務フローの一部に関わるような仕事や業務改善をテーマにした仕事を受けてみるとよいでしょう。
4.事務がスキルアップして目指せるキャリアチェンジ
①営業事務
営業事務は、一般事務と似ていますが、営業スタッフのアシスタントとしての役割が強い事務職になります。
商品の受発注業務や見積書・請求書の発行、顧客対応業務などを任されることが多いので、社内の営業担当者だけでなく、社外の取引先とやり取りをする機会が増えます。
また、売上や取引に直結する業務なので、業務のスピードやミスのない対応が求められ、その分専門性が高くなります。
「ちばキャリ」にも千葉県の営業事務の求人が掲載されていますので、実際に求人をご覧いただき、仕事内容や役割を確認した上で、営業事務に求められるスキルアップをすれば、価値が上がっていきます。
②貿易事務
貿易事務は、その名の通り、海外との貿易に関する事務職になります。インボイスなどの貿易書類の作成、英語でのメール対応・電話対応などが主な業務となります。
海外とのやりとりのため英語力はもちろんですが、物流関係の知識も重要となります。
「ちばキャリ」にも千葉県の貿易事務の求人が掲載されていますので、実際に求人をご覧いただき、仕事内容や役割を確認した上で、貿易事務に求められるスキルアップをすれば、価値が上がっていきます。
※千葉県の中小企業においては、貿易事務としての求人は極めて少なくなります。
③経理
経理は、会社におけるお金の流れを数値化し正確に管理する役割を担います。日々の売上や経費の管理、仕入れ管理、税金の計算、決算書作成、伝票の管理など、幅広い業務が求められます。
簿記の仕組みや数字に強いことが重要となります。
あえて経理事務と書かなかったのは、経理事務はテクノロジーの進化の影響を受けやすく、経理職を目指してスキルアップを考えたほうが良いと考えるからです。
「ちばキャリ」にも千葉県の経理の求人が掲載されていますので、実際に求人をご覧いただき、仕事内容や役割を確認した上で、経理に求められるスキルアップをすれば、価値が上がっていきます。
※実際のところ、中小企業においては経理職ではなく経理事務の求人が多いので、経理職へのステップアップできる環境かどうかも重要ですね。
④人事・労務
人事は人材採用や人材育成など人材関連の業務を主に行い、労務は勤怠管理や給与計算などの労務に関する管理を担当します。中小企業においては、担当する領域は幅広く、どちらか一方ということは少ないでしょう。
また、さらに総務も含めて、人事・総務として担当することも多いようです。
社会保険や労働関係の知識が重要となります。
「ちばキャリ」にも千葉県の人事・総務系の求人が掲載されていますので、実際に求人をご覧いただき、仕事内容や役割を確認した上で、人事・労務に求められるスキルアップをすれば、価値が上がっていきます。
※千葉県の中小企業においては人事・労務の求人は極めて少ない状況です。
※取得検討できる資格:産業カウンセラー、社会保険労務士
⑤秘書
秘書は、企業の経営者や役員をサポートする役割を担います。仕事内容は、スケジュール調整・管理、来客・電話・メール対応、文書作成・管理、各種手配業務など多岐にわたります。
ビジネスマナーを始め、スケジュール管理力やコミュニケーション能力が重要となります。
「ちばキャリ」にも千葉県の秘書系の求人が掲載されていますので、実際に求人をご覧いただき、仕事内容や役割を確認した上で、秘書に求められるスキルアップをすれば、価値が上がっていきます。
※千葉県の中小企業においては秘書の求人は極めて少ない状況です。
4.まとめ
今回の記事では、事務としてスキルアップすべきスキルや、その方法、事務からのキャリアップの方向性について解説しました。
事務は一見、簡単そうな仕事に見えますが、ITやテクノロジーの進化の影響を受けやすく、スキルアップの必要性が強く求められている職業です。また、スキルアップをすることで組織における有用性、存在価値の高い仕事でもあります。
そのことをしっかり認識して、ぜひ価値の高い事務を目指してください。
「ちばキャリ」にも千葉県の一般事務の求人が掲載されていますので、一般事務に関してもどんな人が求められているかを改めて確認し、スキルアップの方向性を決めて実行できると良いと思います。