「上司や人事担当者からキャリアプランを立てるように言われた」「転職を検討するにあたってキャリアアドバイザーからキャリアプランを立てることを提案された」など、様々なきっかけでキャリアプランの作成に着手しようとされていることでしょう。
でも、「キャリアプランってどうやって考えたらいいの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。また、そもそも、キャリアプランを立てることにどんな意味があるのかわからないという方もいらっしゃるのではないかと思います。
この記事では、私が知っておいた方が良いと思うキャリアプランに関する考え方やキャリアプランの必要性について解説します。
キャリアプランの必要性や重要性は昔から説かれていることですが、私はその必要性がどんどん増してきているように思います。時代が大きく変化していますので、変化に取り残されないようにキャリアプランの立て方はもちろんのこと、考え方についてUPDATEしないと人生において大きな損をするように思うのです。その点も含めて解説します。
この記事を読んでいただければ、「今の時代を生き抜くためのキャリアプランの考え方」にたどり着けるはずです。キャリアプランの考え方をUPDATEして人生100年時代を楽しく満喫しましょう!
1.キャリアプランの考え方4つのパターン
この章では、私がキャリアプランを考えるにあたって重要だと感じる4つの考え方をご紹介します。中でも特に私が重要だと思うのが1つ目と2つ目の視点です。
5年前にベストセラーとなった「 LIFE SHIFT|100年時代の人生戦略」、今年発売された続編「LIFE SHIFT2」がとても参考になるので、その中の文章を引用しつつ解説したいと思います。
今の時代は変化が速く、激しく、1つ前の世代(親の世代)とは大きく異なってきています。平均寿命が大幅に伸びていますし、AIを始めとしたテクノロジーは劇的な進歩を遂げています。それらが自分のキャリアにどのような影響を及ぼす可能性があるのか、今の時代背景をしっかり理解した上で、自分自身のキャリアプランを立てていくことが大切です。
1-1 人生100年時代をベースにした考え方
では、この人生100年時代においてどのようにキャリアを考えればよいのか。それに関して、例えば、「LIFE SHIFT」の分析がとても参考になります。
人が長く生きるようになれば、職業生活に関する考え方も変わらざるをえない。人生が短かった時代は、「教育➔仕事➔引退」という古い3ステージの人生の生き方で問題なかった。
しかし、寿命が延びれば、二番目の「仕事」のステージが長くなる。引退年齢が70~80歳になり、長い期間働くようになるのである。多くの人は、思っていたより20年も長く働かなくてはならないと想像しただけでぞっとするだろう。不安も湧いてくる。
そうした不安に突き動かされて、3ステージの生き方が当たり前だった時代は終わりを迎える。人々は、生涯にもっと多くのステージを経験するようになるのだ。
引用元:LIFE SHIFT
ここで紹介されている「教育➔仕事➔引退」という3ステージの人生はまさに私の親の世代の生き方を象徴しているように思います。でも、平均寿命が伸びた今、この3ステージで人生設計をするのは極めて難しくなっています。
なぜなら、健康寿命が伸びたことだけでなく、年金制度など社会的な問題もあり、第1、第2ステージの貯金(金銭的にもスキル的にも)で第3ステージを快適に過ごすことができなくなっているからです。
キャリアプランの期間ということで言えば、これまでは60歳までを考えればよかったわけですが、今は60歳で引退するのは極めて困難なことです。場合によっては70歳、もしくは、80歳まで働くことを前提にキャリアプランを考えなければなりません。
そして、第1➔第2➔第3と3つのステージが連続するのではなく、さまざまなステージを並行したり移行したりしながら生涯現役であり続ける必要があるマルチステージの時代であるということも考慮しないとならないのです。
例えば、人生が長くなることで、学習や勤労、余暇を人生全体に振り分けることが必要、可能になります。人生の一時期をのんびり過ごしてみたり、自由に転身を重ねたり、子供と過ごす時間を増やしたり。男性の育児休暇の取得が増えてきているのもその一例なのではないでしょうか。
一方、時間の配分が自由にできる反面、60歳を超えても働き続けるためのスキル習得や人脈獲得を考える必要も出てきます。
その他、働き方に関しても考え直さなければなりません。キャリアの流動性がどんどん高まっている中、フルタイム以外の働き方がとても大事になってきます。フリーランスで働いたり、人材派遣会社を利用したり、パートタイムで働いたり。いわゆるギグワークと呼ばれるような働き方も重要になるでしょう。
この分野はまだまだ法整備も整っていない状況ではありますが、それも含めてキャリアプランの設計をしていくことが大事になってくるのです。
人生100年時代を踏まえてキャリアプランを考える、これが私がご紹介したい1つ目のキャリアプランの考え方です。
もちろん、様々な部分において、困難なこと、想像しにくいこともあるでしょう。なぜなら、まだ、企業や社会が対応できていないからです。しかし、だからといって将来のキャリアを考えないことの理由にはなりません。長い目で見るということがとても大事なのです。
「ちばキャリ」のユーザーにもまさにマルチステージの生き方をしている方がいらっしゃいます。
ちょうど、先日取材した方は、転職を3度した後、フリーランスとして1年半充電しながら働き、今年改めて就職したというご経歴でした。
この方の転職体験談などもキャリアを考える上でとても参考になりますね。
1-2 テクノロジーの進化をベースにした考え方
テクノロジーの進化によって将来多くの仕事がなくなるという話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
新聞や雑誌などでも度々「10年後になくなる仕事とは?」などという特集がされています。
ちなみに、下図は、2014年に英オックスフォード大学でAI(人工知能)などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授の論文で紹介されたコンピューターに置き換わると考えられる仕事のリストです。
でも、安心してください。これらを踏まえてキャリアプランを考えることができれば、そんなに慌てることはないのです。
AIの進化によって多くの職が失われる。それは事実でしょう。しかし、不安になる必要はありません。なぜなら、AIの進化によって新たに生まれる仕事も多いからです。実際、これまでの産業革命においても、多くの仕事がなくなった一方、新たな仕事が生まれてきています。
ここでは「LIFE SHIFT2」の解説が要点を突いていると思いますので、一部引用させていただきます。
機械が現在と未来の職に及ぼす影響を正しく理解するためには、職(ジョブ)と業務(タスク)を分けて考える必要がある。機械が担うのは業務で、ひとつの職はいくつもの業務で構成されている。あなたの職が消失のリスクにさらされているかどうかは、あなたがその職でどのような業務を実行していて、それらの業務のなかのいくつが自動化される可能性があるかによって決まる。
引用元:LIFE SHIFT2
AIの進歩によってすぐに職がなくなるのではなく、職の中のいくつかの業務がなくなるという点が重要です。いくつかの業務がなくなる一方、別の業務が生まれる可能性があるわけです。
例えば、学校の先生。AIやアプリ、ツールの進化により、採点業務や定型的な授業の仕事は減るかもしれません。ですが、最適な学習方法を提案するようなファシリテート業務やカウンセリング業務はなくなりませんし、これまで以上に重要になるでしょう。
また、弊社の管理部門の仕事においてもテクノロジーの発達により、単純な事務仕事は激減しました。しかし、業務を改善するための設計やツールの選択、導入の段取りなどの仕事は増えており、事務職の仕事内容は高度化してきています。
というように、キャリアプランを考えるにあたって、今の自分の職におけるどの業務が自動化され、どの業務が自動化されないか、また、自動化に伴いどんな別の業務が生じる可能性があるか、それらを考えることがとても大事なのです。
定型的な業務は自動化により置き換えられる可能性が高いわけで、いかに非定型的な業務を行うかを意識しないとテクノロジーの進化の影響をもろに受けてしまうわけです。
職だけでなく、職の中の業務の将来性をしっかり認識してキャリアプランを設計する。これが2つ目に紹介するキャリアプランの考え方です。
1-3 自分の価値観をベースにした考え方
続いて重要な考え方としてご紹介したいのは、自分の価値観をベースにするという考え方です。当たり前のことですが、自分の価値観や信条とマッチしない仕事をしていくというのはとてもしんどいものですよね。
ですから、自分のキャリアプランを考えるにあたって、自分の価値観、何を大事にしているのかを理解しておくことが大事だと思うのです。
自分の価値観を理解するには、時系列で考えることが有効です。まず、自分の過去を振り返って自分を見つめ直します。
どのような時に「やりがいを感じたか」また逆に「やる気をなくしたか」、どのような時に「喜びを感じたか」また逆に「悲しみを感じたか」といった自問自答を繰り返し、自分自身の価値観や仕事観を探るのです。
そして、今現在はどうかを分析します。どんな能力やスキルを培ってきたのか、何が得意なのか、何にやりがいや喜びを感じているのか、逆に何に不満を感じているのか。
その上でこれまでの経緯を踏まえて、未来を考えます。この先、どんな風になっていたいのか、何を大事にしていきたいのか、どこでどんな生活をしていたいのかなどなど。自分の価値観を大事にしてワクワクするような将来像、キャリアプランを描くことがポイントとなります。
このように時系列で自分を振り返って、価値観を認識することで将来像を描くというのが3つ目のキャリアプランの考え方です。
1-4 自分のやりがいをベースにした考え方
最後にお伝えしたいのは、自分のやりがいをベースにするという考え方です。なぜなら、仕事を通じてやりがいを感じられる瞬間が多い方が、モチベーションが高まり、人生を豊かに感じられる瞬間も増えると思うからです。
そこで、ここでは、1-3の価値観をベースにするという考え方とも近いのですが、フレームワークを活用し、より体系立てて自分がやりがいを感じるポイントを理解するという考え方をご紹介します。ご紹介するのは、「WILL、CAN、MUST」というフレームワークです。
WILLとは、自分のやりたいことやなりたいもののことです。夢や憧れ、志向などで、例えば、人に直接喜ばれる仕事がしたい、クリエイティブな仕事がしたい、教える仕事がしたいといったものになります。WILLを満たせる仕事は、労力を惜しまず努力しやすく、高いモチベーションにもつながります。
CANとは、自分のできることや持っているスキルのことです。能力、知識、資格なども含まれます。例えば、テレマで新規顧客のアポイントが取れる、イラストレーターでPOPが作れるといったスキルや部下のモチベートができる、課題解決のための戦略立案ができるといったこともあるでしょう。CANを活かせる仕事では、高い成果やパフォーマンスを上げることも可能です。
MUSTとはやらなければならないこと、自分が社会や会社から求められていることです。求められている役割や義務でもあり、周囲からの期待でもあります。例えば、部門の目標数字を絶対に達成する、期日までに必ず完工させる、後輩の育成を行うといったことが挙げられるでしょう。MUSTがある仕事は、組織や同僚からの期待を感じられるため、高い存在感やロイヤリティにもつながります。
この3つの輪が重なり合うところに仕事の満足感が生まれ、重なりが大きいほど満足感が高くなると言われています。
フレームワークを使うことによって自分のやりがいの元、モチベーションの源泉を掴み、それを満たすようなキャリアを描くというのが4つ目のキャリアプランの考え方となります。
2.キャリアプランは必要?
1章で4つのキャリアプランの考え方をご紹介しました。それぞれの解説の中で、キャリアプランを立てる重要性を感じていただけたと思いますが、この章では改めて、キャリアプランを考えるメリットやデメリットをまとめてみました。
2-1 キャリアプランを考えないとどんどん選択肢が減る
というのも、若いうちは正直、キャリアプランがなくても大きな影響を感じることは少ないかもしれません。
しかし、社会環境、経済環境、自身を取り巻く環境はどんどん変化しています。人生が後半になればなるほど、急に大きな舵を取ることはできなくなりますし、選択肢も減ってきます。
人生の様々な局面で複数の選択肢を用意できるかどうか、私はこれがキャリアプランを考えているかどうかの大きな差ではないかと考えています。
つい先日も、フジテレビが希望退職者を募っているというニュースがありましたが、ミドル、シニアと年齢を重ねると、正社員として同一企業で勤め続けていくことが難しくなりますし、定年後に再雇用してもらえるかどうかもスキルやポジションによってまちまちです。そうすると転職という選択肢になりますが、これも簡単ではありません。
例えば、前章で、職業と業務を分けて考えることが大事というお話をしましたが、機械化されない業務を考えて仕事をしていないと、テクノロジーの進化の波に飲み込まれてしまいます。歳をとればとるほど、別の業界や別の職種で未経験で仕事を再スタートするのは難しくなりますし、肉体的にも選べる仕事が減ってきます。
また、機械化されない業務のスキルを習得するのには時間がかかりますし、自分の価値を評価し必要としてくれるような人脈の構築にも時間がかかります。
ですから、早いうちからキャリアプランを考えることで、どんなスキルを磨くのか、どんな経験を積むのか、どんな人脈を築くのかといったことを考えて自分磨きをしておく必要性が増しているのです。
上図のように、年齢が増すごとに積極的な理由による転職の比率も減ってきます。健康にも関わらず人生の終盤で望んでいない生活を送るなんて事にならないためにも、人生の選択肢を増やすためにも、早い段階からキャリアプランを考えることが大事だと私は思います。
ある意味、企業のつくった教育プログラムや研修制度に乗っかっていればよかったわけです。また、日本経済が成長している時代においては、業務を誠実にこなしていれば特に問題はなかったのです。
しかし、日本経済が成熟している今、社員に求められるスキルや役割は日々変わってきていますし、企業においても、時代に適した社員教育を行う余裕がなくなってきています。結果、自分自身でスキルアップや成長のための機会を作ることが必要となってきています。
将来のために必要なスキルを自ら学ぶこと、キャリアプランを考えること、これらが自己責任になってきているのではないでしょうか。
「LIFE SHIFT2」にもまさに次のような記載があります。
重要なのは、キャリアの流動性が高まる時代には、ひとりひとりが責任をもって主体的な選択をおこなう必要があるということだ。昔と違って、キャリアを築くプロセスは、あなたと雇用主の共同作業ではなくなる。雇用主があなたのスキルを向上させ、新たなステージに向けた計画を立て、未来のための資金面の準備をし、キャリアの様々な選択肢を検討してくれる時代ではなくなるのだ。こうしたことは、あなた自身の役割になる。
引用元:LIFE SHIFT2
最近では健康志向が高まり、健康を維持するための活動を日々行っている人が増えていますが、学ぶことについても同じ。自分の仕事や働く環境を維持するための勉強を日々行っていくことが必要とされているのではないでしょうか。
2-2 キャリアプランを考えるメリット
①行動指針が定まる
②仕事のモチベーションがアップする
自分の価値観ややりがいを探求することでモチベーションアップが可能になるのです。
③周囲に与える影響が変わる
④転機のチャンスをつかめる
2-3 キャリアプランを考える上での注意点
①固執しすぎない
キャリアプランを考えることは大事ですが、固執しすぎず、偶発性を受け入れましょう。もちろん、キャリアプランを考えておくことで、偶然の転機をポジティブに受け止められる可能性は高まると思います。
②理想を追いすぎない
③しっかり調査をする
その方向に進むにあたって何か足りないことはないか、見落としていることはないか、しっかり調査することを怠らないようにしましょう。
3.まとめ
今回の記事では、キャリアプランに関する考え方やキャリアプランを考えない事による弊害、キャリアプランを考えるメリットなどについて解説させていただきました。
平均寿命が伸び、テクノロジーが劇的な変化を遂げている今、時代は大きく変化しています。だからこそ、キャリアプランを考えることの重要性が増しています。そのことをしっかり認識した上で、前向きなキャリアプランを設計したいですね。