「もうこんなブラック企業は辞めて転職してやる!」と悩んでいる人は少なくありません。しかしこうした考えを持っている人の中には、「ブラック企業の定義」を正確に理解していない人が多いようです。転職を実行に移す前に、自分の会社は本当にブラック企業なのかを把握しておくことはとても大切です。もし自分の定義が間違っていれば、どの会社に行ってもブラックだと感じることになるかもしれません。
ブラック企業の定義
ブラック企業の定義は、法律や辞書などで明確に定められているわけではありません。
国がブラック企業の特徴を3つ挙げています。(参照:確かめよう労働条件/厚生労働省)
- 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
- 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
- このような状況下で労働者に対して過度の選別を行う
こうした特徴がある企業で働いている人は、「問題に応じて外部の関係機関や労働組合に相談することが有効」と国から提案されています。外部の関係期間とは、労働基準監督署や各都道府県の労働相談窓口のことを指します。
そして自分の会社がブラック企業の疑いがある場合は、「転職」も有効な手段です。
ただこれら3つの特徴だけでは、ブラック企業か否かを判断できない人がほとんどでしょう。そんな人のために、これらの特徴を踏まえながらブラック企業を見分けるポイントをより具体的に見ていきます。
転職前に確認したい、自分の会社がブラックを見分けるポイント4つ
1.残業代が出ない
残業代の有無はもっとも分かりやすい見分け方の1つです。
会社には、時間外労働をさせた従業員に対して正当な賃金を支払う義務があります。たとえ会社の規則に「残業代の支給なし」と書いていても、「支給しなければならない」と定める労働基準法の効力の方が当然強いです。ですから、こうした就業規則は無効です。
また「会社から『ウチは"みなし残業"だから手当は出ない』と言われたけど、どうなの?」という事例も良く耳にします。これも場合によっては違法です。みなし残業自体は合法ですが、深夜労働時間や休日出勤などの手当は実際の労働時間分の賃金を支払わなければならないためです。
2.早期の離職率が高い
新しく入社してきた社員の多くが早期離職してしまう会社も、ブラック企業である可能性が高いです。職場や待遇に何かしらの問題があるはずです。目安は2年以内ですが、短い期間で辞める社員が多いほどその傾向が強いと言えます。
ただ近年は、価値観や働き方の多様化から、会社に対して特に大きな不満がなくでも早期に辞める人が増加しています。離職率が高い=ブラック企業、と安易に判断できなくなってきている点も頭に入れておいた方がいいかもしれません。
3.違法な時間外・休日労働がある
次のような時間外労働と休日労働は違法です。
- 1日8時間、週に40時間を超えた労働
- 法定休日の労働
企業は従業員にこれらの形で労働させた場合、労働基準法109条により「6ヶ月以下の懲役または30万円以下」の罰金に処されます。ただし、企業側と従業員との間に事前に協定が結ばれている場合は違法にはなりません。いわゆる36(サブロク)協定というもので、労働時間の延長や休日の労働を認めることができる契約です。「違法だ!」と訴える前に、この協定を結んでいるかどうかを、上司や経営者に確認するようにしましょう。
(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構)
4.ハラスメントが常態化している
ハラスメントとは「嫌がらせ」のことです。パワハラ、モラハラ、セクハラ、ジェンハラ(ジェンダーハラスメント)などさまざまな種類があります。これらのうち何らかのハラスメントが常態化している職場は、ブラック企業である可能性が高いです。常態化している職場環境があるということは、「コンプライアンスが正常に機能していない会社」ということです。
こんな会社はブラック企業じゃない
「給料が同じ業界の企業より安い」、「休みが年間90日しかない」、といった理由で、自分の会社はブラックだと言う人がいます。しかし、これだけではブラック企業とは断定できません。
給料については、労働契約を結んだ時に自分でも納得した上で入社しているはずです。また休日については、先述したように、最低週1回の休みがあれば違法性は生じません。(ただし労働時間が1日8時間・週40時間以上の場合は違法の可能性あり)
また「業務が多い」ことでブラック企業だと思い込んでいる人もいますが、これも安直な場合があります。特に社会人3年以内の人の場合、中堅・ベテラン社員よりも生産性や効率性が低いため、業務量が多く感じるのは当然です。「ブラックだ!」と叫ぶ前に、まずは仕事のやり方を工夫したり、先輩らにアドバイスをもらったりすることも必要です。
中小企業でもホワイト企業はたくさんある
もし「中小企業=ブラック企業」と認識している人がいたら、その認識は捨てるべきでしょう。日本の99%は中小企業ですから、そのほとんどがブラックだとしたら日本の経済は回っていないはずです。ブラック企業が多いと言われるIT業界や金融業界の中小企業にも、従業員を大切にしているホワイト企業はたくさんあります。
近年は、いわゆる「大企業志向」の学生や転職希望者は減ってきたと言われますが、まだまだ多いのが実態です。中小企業にも優良な企業があることを知り、転職先として積極的に検討するようにしましょう。
そうすれば、転職先の候補(分母)が増えるので、転職成功の確率もグッと上がるはずです。
「耐えられない!」と思ったら転職を
紹介した4つのポイントに該当しなくても、自分で「もう耐えられない!」と感じたら転職をするべきです。ブラック企業ではなくても、無理に続けていると精神衛生上良くありません。
そもそも転職をする・しないの判断は、自分の会社がブラック企業かどうかだけで決めるものでもありません。「自分が有意義に働ける会社かどうか」、「理想やキャリアプランを叶えられるかどうか」といったことを基準にして判断するべきです。
今、ボンヤリと転職を考えている人はこの点も必ず押えておきましょう。
作成:尾崎 海(おざき かい)
東証一部化学メーカー(営業職)から転職を経てライターに転身。就活・転職活動で悩んだ自身の経験を活かし、求職者や仕事で悩んでいる人に向けた記事をメインに執筆中。
作成日 2018/08/17
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